“反ワクチン”600人解雇の波紋 「違い」を「分断」にしないためには:単純な図式化の危険性(2/4 ページ)
米ユナイテッド航空が、ワクチン接種拒否者600人を解雇する方向だというニュースがあった。また、米国のバイデン大統領は、ワクチン接種に関して「自由や個人の選択といった問題ではない」という趣旨の発言もしている。こうしてワクチン接種が加速する一方で、事情があり接種しない/できない人も出ており、分断の種ともなっている。
先ほど紹介した「新型コロナワクチンQ&A」には、ワクチンの効果について次のように説明されています。
“日本で接種が行われている新型コロナワクチンは、いずれも、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する高い効果があり、また、重症化を予防する効果が期待されています。効果の持続期間や、感染を予防する効果についても、時間の経過や接種者数の増加に伴い、研究が進んでいます”
感染症の発症については“予防する高い効果”があると明記されていますが、重症化については“予防する効果が期待”されているという記述にとどまり、感染予防に至っては“研究が進んでいます”としか書かれていません。
上記説明を踏まえると、先ほど見た(2)や(3)については、仮に会社が社員に対してワクチン接種を強く推奨したとしても、必ずしも効果があるとはいえないことになります。
しかし「効果がない」とも言い切れないため、効果への期待を込めて会社がワクチン接種を推奨することにも一定の理はあるのだと思います。ただし、ワクチン接種者と未接種者で配属場所や職務を分けるなど踏み込んだ対応をする際は、合法性について慎重に検討する必要があります。
単純な図式化に陥るな
ワクチン接種を強く推奨する職場は、同調圧力によってワクチン未接種者が居づらくなる空気が流れてしまったりすることにも留意が必要です。さらにエスカレートすると、未接種者に強引に接種を迫ったり、これ見よがしに非難したり、差別的な対応をするようなハラスメントが発生することも考えられます。あるいは、表面化はしていなくとも「ワクチン接種者=正義/ワクチン未接種者=悪」のように単純に図式化されてしまい、知らず知らずのうちに個々の社員の中に“心の壁”が形成されてしまう懸念もあります。
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