宣言解除でアパレル業界の復活なるか 秋冬商戦で問われる企業の力:磯部孝のアパレル最前線(3/3 ページ)
コロナ禍で人流に変化がおきて生活者のライフスタイルも変わった。生活者のライフスタイルの変化に対応できた企業と出遅れた企業とでは業績に差が生まれたように思う。アパレル業界が打破しなければならないポイントや対応策について考えてみたい。
気候変動がアパレル業界に与えるリスク
ユニクロも含め、アパレル関連企業は9〜2月の秋冬商戦でしっかりと稼いでいくのが定石。アパレル企業の倒産が、冷夏よりも暖冬の方が圧倒的に多いのもそのためだ。
気候変動がビジネスリスクに与える影響はますます大きくなっている。実際に9月後半頃まで続いた高気温の中で、長そでを始めとした秋物の商品の売れ行きは鈍かったが、寒気が入り込み気温が低くなった途端に商品が動き出す。
もはやこれは、温暖化とか暖冬といった次元の話ではなく、気象現象が極端に振れる極端現象によるものだ。この極端現象とは日最高気温が35度以上の猛暑日や1時間降水量が50ミリ以上の強い雨などが特定の指標を超えて頻発することを指す。
今年の冬は、熱帯太平洋の海面水温分布が“ラニーニャ”の特徴を示しつつあるようだ。ラニーニャとは、南米沖などで水温が低く日本南海上などで高めになる現象。そうすると、上空の風の流れに影響を及ぼし日本付近では寒気が南下しやすくなる事が多くなる。ラニーニャ現象のピークは、21年11月〜22年1月で、今年は20年並みに厳しい冬になる可能性があるとの予想が出ている。
今年の冬にラニーニャ現象が現れれば昨年並みの寒さが期待できるが、中国工場の停電、東南アジア地域によるロックダウンによる商品の納期遅れが懸念材料になっている。そこに原綿、ポリエステル含めた原料高、更に円安傾向と、供給サイドにとっては、悪条件ばかりが目立つ。
緊急事態宣言が解除され、生活者のライフスタイルがまた変わる。以前起こったようなリベンジ消費は、給付金支給タイミング次第といったところか。いずれにせよ、ライフスタイルの変化には必ず商機が生まれてくる。そこを見逃さず俊敏に対応できる企業姿勢を望んで止まない。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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