空港・カジノ・イベント会場──米アマゾン技術で“無人店舗”が急増中 一方、進出しづらい業界も:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(2/4 ページ)
近年、増えている無人店舗。米国では「Amazon Go」の技術がさまざまな分野に進出している。どのような店舗でこの技術が使われているのか? こうした無人店舗が進出しやすい業界とそうでない業界の違いとは──?
(2)イベント会場
スポーツやコンサートの会場でも、Amazon Goの「Just Walk Out」技術を採用しています。シアトルにある新しいコンサート会場“Climate Pledge Arena”では、混雑を避けるために会場内の店舗を無人化しています。
この会場では、天井や棚にあるカメラやセンサーが顧客の商品受け取りを追跡し、入場時に挿入されたクレジットカードで容易に支払いが行える仕組みを導入しました。
また、同会場では、最近ローンチしたAmazon One(手のひらをIDの代わりに認証するバイオメトリクス認証)も導入しました。スマホを取り出す手間さえも省けるため、さらなる時間短縮が実現すると考えられます。
先日メジャーリーグの試合を見に行ったのですが、シーズン中ということもあり、スタジアムはほぼ満員でした。野球の場合、ハーフタイムなどがないため好きな時に食べ物を買いに行くのですが、どのお店も大混雑で、かつ立ち見客が廊下を埋めており、食べ物を購入する間に1イニング丸々見逃してしまうことも珍しくありません。
特に、最近ではコロナ対策という意味でも会場内の混雑は避けたいところですので、イベント会場内の店舗が無人化し、混雑の緩和に一役買うことについては、個人的にも是非期待したいところです。
(3)スーパーマーケット
アマゾン傘下のスーパーマーケットチェーンであるホールフーズは、2022年にカリフォルニアとワシントンDCの2店舗で「Just Walk Out」技術を採用する予定です(21年9月に発表)。
前述のAmazon Oneも導入するとのことで、買い物客はセルフレジ、Just Walk Out、またはカスタマーサービス窓口での購入など、さまざまなオプションが選べます。
ホールフーズのCEOであるジョン・マッキー氏は、下記のように述べています。
「Amazonとのコラボレーションにより、ホールフーズの2店舗で“Just Walk Out Shopping”を導入します。これにより、お客さまにはホールフーズの比類なき品質基準を満たした新鮮で考え抜かれた商品をご購入いただけます。また、お客さまの買い物中には優れたサービスが提供され、レジに並ぶ時間を短縮できます。私たちは、お客さまがホールフーズで手軽で便利な新しい購入体験をされることを楽しみにしています」
なお、これらのホールフーズの店舗を利用するには、必ずしもAmazonプライム会員である必要はなく、Amazonアカウントを持っている必要もありません。セルフレジを利用することで、誰もが買い物できます。また、「Just Walk Out Shopping」を利用してレジでの会計を省略するには、以下の3つの方法があります。
- ホールフーズまたはアマゾンのアプリでQRコードをスキャンする
- アマゾンアカウントにリンクしたクレジットカードまたはデビットカードを挿入する
- 「Amazon One」を使って手のひらをかざす
ちなみに、「Amazon One」への登録にかかる時間は1分弱です。Amazonアカウントにリンクしたクレジットカードを挿入した後、「Amazon One」デバイスに手のひらをかざすだけで、会計作業をスキップして支払いができます。また、セルフレジでは現金、プリペイドカード、ホールフーズのギフトカード、EBT、eWicなど、さまざまな支払い方法を選択できます。
通常、ホールフーズの店舗は巨大なものが多く、例えばランチのサンドイッチとドリンクのみを買いに来たような顧客は“Express Lane”(10個以下の商品を購入する買い物客用の会計レーン)を利用することが多いのですが、それでも並ぶこと自体は避けられません。このような顧客層にとって、こうした技術の導入は非常に便利なものでしょう。
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