ビジネスホテルの“無料朝食”、気になる原価は一体いくら? 激化する“朝食合戦”から見るホテルの今:瀧澤信秋「ホテルの深層」(3/4 ページ)
ホテルが朝食で特色を出そうとしていることは、宿泊者としてひしひしと感じる時がある。新たな施設の建設やリノベーションを施せば特色は強く打ち出せるが、コストはバカにならない。朝食は差別化のアイテムとして取り組みやすい部分なのだろう。
朝食込みでお得感を演出
先ほどから“無料朝食”と表現しているが、無料朝食について記事を書くと「無料とはいえ宿泊料金に含まれているだけで厳密には無料ではない」というツッコミをいただく。その通りであるが、有料朝食との対比表現としての無料朝食というワードはホテル側でも打ち出している表現である。一方、有料朝食も、これは有料といえるのか? と感じる時がある。有料朝食は宿泊とセットで朝食付きプランとして売られているケースが多い。
本来ならば、素泊まりの宿泊料金に朝食の定価を上乗せするからこそ“有料朝食”と表現するものだ。しかし、朝食付きプランを見ると、本来の朝食の定価は厳密に上乗せされておらず、かなり割り引かれているパターンが当たり前だ(時に有料なのにプランとして無料で付いてくることも)。“朝食を付けるとお得ですよ”というアナウンスにも見える。また、チェックイン時に「前日なら朝食券を安く買える」といった案内もよく見かける。
宿泊客ではなく、朝食だけを食べに来るゲストは当然定価を支払うわけであるから、定価は朝食の価値を表明するある種“記号”的側面もあるのだろう。また、宿泊客へのサービスという面では、選ばれるホテルとなるための一つのアイテムとして力を入れる朝食をセットにしたプランでお得感も打ち出し、予約客数の増加につなげたいというホテル側の強い思いを感じる。
ところで、ホテル朝食といえば「ブッフェスタイル」が定番で、事実人気がある。ブッフェスタイルを採用した場合、しない場合によるホテル側のコスト負担についてはここで触れないが、ホテルが朝食にどれくらいの原価をかけているのかは気になるところだ。
ホテル朝食の今について前置きが長くなったが、今回は宿泊特化タイプのホテル朝食(ブッフェスタイル)について深掘りしたい。
関連記事
- ホテル1室のアメニティー、清掃費用は一体いくら? ホテルの気になる“原価”あれこれ
コロナ禍で価格が下がっているホテル利用料金。そもそも原価はどのくらいなのだろうか。運営会社に取材を試みた。 - バブルの名残 温泉街の「大型施設」が廃墟化 鬼怒川と草津の違いと「大江戸温泉物語」の戦略
コロナ禍がもたらす温泉街への影響は甚大だが、「温泉の魅力」として考えさせられるのが“街づくり”という点だ。筆者は「施設そのもので集客できる強い宿は例外的で、温泉地の魅力自体が集客を左右する」と指摘する。 - 実は3種類ある「プリンスホテル」 売り上げ1位なのに、実態がよく知られていないワケ
規模や知名度などから、日本においてホテルの代名詞的な存在とされてきた「プリンスホテル」。2007年からは“新生プリンスホテル”として、ブランド戦略を進めている。 - 寮発祥のドーミーインが「大浴場」をどんどん展開するワケ 手掛ける「和風ビジネスホテル」とは?
「宿泊施設のカテゴリーボーダーレス化」が進んでいるが、ドーミーインのサブブランド「御宿 野乃」もそのひとつだろう。 - ドーミーインのこだわりは「大浴場」だけじゃない 店舗数拡大でも維持する「水風呂」と「朝食」の質
共立メンテナンスが運営するビジネスホテル「ドーミーイン」。大浴場のこだわりにとどまらず独自サービスを展開している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.