ビジネスホテルの“無料朝食”、気になる原価は一体いくら? 激化する“朝食合戦”から見るホテルの今:瀧澤信秋「ホテルの深層」(2/4 ページ)
ホテルが朝食で特色を出そうとしていることは、宿泊者としてひしひしと感じる時がある。新たな施設の建設やリノベーションを施せば特色は強く打ち出せるが、コストはバカにならない。朝食は差別化のアイテムとして取り組みやすい部分なのだろう。
宿泊特化型ホテルの朝食も進化
宿泊特化タイプだけど豪華なホテル、ビジネスホテルのようにサービスを割り切るシティーホテル、温泉ライクなビジネスホテルというように、ホテルカテゴリー自体もボーダーレス化していて、それは朝食も同様である。ホテルの格=朝食の内容(基本的にそうした傾向はあるものの)とは一概には言えないのがホテル朝食のいまである。
高級ホテルやラグジュアリーホテルではないのに「えっ、こんな朝食を出しているの?」と感じるのは、高級ホテルに比べて宿泊料金も安い「宿泊特化タイプ」の朝食だろう。その進化はやはり気になるところだ。
多様なサービスを提供するシティーホテルと比較して、宿泊特化タイプのホテルでは、特徴を打ち出せる部分は限られているので、利用者側も(もちろん施設の新しさや予算はあるとして)ホテルを選ぶ基準として、朝食を事前にチェックする人も多いのではないか。
そんなゲストのニーズを充足させようと、一般的な宿泊特化タイプのホテルでも、地産食材やご当地メニューなど特色ある内容はいまやデフォルトになっている。
一方、ローコストタイプのビジネスホテルの中には“無料朝食”をウリにするブランドもある。実際に体験してみると、豪華な食材が見られないのは当然だが、ご飯やみそ汁、数種のおかずといった温かいメニューもそろっており、時間の無いビジネスパーソンにとっては簡素にパパっと済ませられるのはうれしいとの声も強い。
うまくニーズにマッチしていると感じる無料朝食だが、同じビジネスホテルでもハイクラスタイプになると前述したような「特徴的な有料朝食」が多々見られる。ハイクラスタイプのホテルが簡素な無料朝食を出していては、やはりホテルブランドとしてのイメージを毀損しかねず、当然の成り行きだろう。
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