“人類未到のお金持ち”イーロン・マスク、個人資産がトヨタ自動車の時価総額上回る:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
世界一のお金持ちといえば、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が長らくその象徴といえる存在であった。そんなビル・ゲイツ氏は、今年4月に公表されたフォーブスの世界長者番付2021年版で4位に位置しており、「世界のお金持ち」の構図も随分と様変わりしたようだ。
最終資産を左右する持株比率
さて、世界一のお金持ちはテスラのイーロン・マスクとなったわけだが、テスラの時価総額自体は、旧王者であるビル・ゲイツの率いるマイクロソフトには遠く及んでいない。
マイクロソフトの時価総額は2.51兆ドルと、テスラの倍以上を誇る。次点でアップル(2.49兆ドル)、サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」(2兆ドル)、Google運営の「アルファベット」(1.95兆ドル)、アマゾン(1.72兆ドル)と続き、テスラは1.2兆ドルで6位に位置している状況だ。
会社の時価総額と個人資産のランキングに違いが見られる要因は、両者の「持株比率」にある。ゲイツ氏は現在、マイクロソフトの主要株主ランキング10位以内に入ってすらおらず、正確な持株比率が分からないほどになっている。少なくとも確かなのは、ゲイツ氏のマイクロソフト株式の持分比率は1.18%未満となっていることだ。会社の時価総額が高くても持株比率が低い結果、自社の株式を23%保有しているマスク氏にゲイツ氏はかなわなくなっているのだ。
この「持株比率」は私たちのビジネスシーンにおいても気を払うべき要素のひとつである。例えば、創業期の資金調達については自己資金で足りない部分を、借入金で賄うかベンチャーキャピタルに出資してもらう代わりに株式を交付するかの二択となる。しかし、借入金による資金調達の場合、CEO個人に連帯保証をつけなければならないパターンも多く、リスクが大きくて失敗しても、個人の資産に影響がない、株式での資金調達を選択しやすい傾向にある。
しかし、業態や予定する成長スピードによっては、借入金による資金調達を選択した方が、最終的に第三者へわたる株式の数量が減り、意思決定スピードやリターンの観点で有利となる。
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