北海道のローカル線を盛り上げる位置情報ゲーム「テクテクライフ」、仕掛け人に聞く:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(11/11 ページ)
JR北海道の釧網本線が全通90周年を迎えた。記念行事の一つとして、地図塗りつぶしゲーム「テクテクライフ」を使ったデジタルスタンプラリーが開催。全国からゲームのファンが来訪するなど、この取り組みが沿線地域の活性化に貢献しているという。ローカル鉄道と最先端デジタル技術のゲームのコラボは、なぜ実現したのか。
北海道の鉄道とテクテクライフのこれから
杉山: 最後に、今後、どうしていきたいかをお話しいただけますか。
近藤氏: 観光振興って、予算をかけてPRすると、確かにお客様が増えます。でも、そのPRがどんな人にどのように届いて、実際に動いたか。正直よく分からないことが多かった。
でも、テクテクライフのスタンプラリーは、どのスポットにどういうタイミングで人が増えたか、どのスポットの次に来て、次はどこへ流れたかが分かります。これで、根拠のある観光政策を作れます。どのチェックインスポットに注力すると、そこをハブとして人の流れを作れるのではないかなど、かなり戦略的に観光ルートを組み立てられる。
もう1つのメリットとして、釧網本線沿線というくくりだと、自治体が複数あって、さらに管轄エリアのオホーツク総合振興局エリアと釧路総合振興局エリアにもまたがっている。これは本州の感覚だと県をまたぐような感じで、意思疎通が難しいんです。
でも、テクテクライフというプラットホームがあるから、乗っかってくれる業者、観光施設、釧網本線を盛り上げたい個人が、すでにゲームを通じてつながっていますから、境界を超えて沿線全体を盛り上げていくムーブメントになると期待しています。
釧網本線がうまくいったら、JR北海道の全路線で、さらに日本中の鉄道路線、そこを盛り上げていくツールとして、私たちのノウハウを使っていただきたい。特にローカル線はどこも大変ですから。
また、別のアイデアですけど、ロシアのシベリア鉄道とコラボして、今まで全くなかったロシアと日本の経済協力の一つとして、テクテクライフが使われたらいいなと。北海道に最も近い隣国がロシアですから。
杉山: 大きな話になりましたね。近藤さん国政に出られるおつもりがあるんですか(笑)。
近藤氏: いやいやいや、私は網走の皆さんのために(笑)。
杉山: 田村さんはいかがですか。
田村氏: 網走の取り組みで得たノウハウでチューニングしていきたいです。緊急事態宣言の終了と同時に、もう引き合いがいくつか来ています。
杉山: 自治体の中でもアンテナの高い人たちは「網走で何かやってるぞ、あれは何だ」と思っていらっしゃったでしょうね。
田村氏: 新たな観光振興プランをスタートさせます。そこでは網走や釧網本線の事例を紹介させていただきます。旅とか飲食をからめ、さらにはほかの事業者と組んだ斬新な企画を全国展開できそうだと見えてきたところです。
杉山: 今はまだ、旅好き、鉄道好き、ゲーム好きの方が多いでしょうけれど……。
田村氏: 僕らはもっと幅広い方々に遊んでもらえると思っています。例えば健康を見える化した機能入れるとか、クーポン的な機能とか、博物館網走監獄さんは画面を見せるだけで割引していただいています。さらに、一定のチェックポイントをめぐったら割引があるといった機能に取り組みたい。観光、飲食、健康、それぞれを応援していくための改善を続けていきます。
あと、先ほど杉山さんに言われちゃいましたけど、交通事業者さんとぜひ連携したい。例えば「網走ってどうやって行くんだろう?」「網走空港はなくて、女満別空港っていうんだ」「飛行機の値段は?何時に飛ぶの?」と旅行者目線の疑問も解決したいです。
杉山: エリア内でも、チェックインスポットがつながって線になる。その線は歩くのか公共交通を使うか、情報を提供できたらいいですね。ゆくゆくは予約サイトに誘導したいですね。ゲームがきっかけの旅のポータル、いいと思います。今後の展開が楽しみですし、この記事がきっかけになったら嬉しいです。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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