北海道のローカル線を盛り上げる位置情報ゲーム「テクテクライフ」、仕掛け人に聞く:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(10/11 ページ)
JR北海道の釧網本線が全通90周年を迎えた。記念行事の一つとして、地図塗りつぶしゲーム「テクテクライフ」を使ったデジタルスタンプラリーが開催。全国からゲームのファンが来訪するなど、この取り組みが沿線地域の活性化に貢献しているという。ローカル鉄道と最先端デジタル技術のゲームのコラボは、なぜ実現したのか。
杉山: 温泉旅行ってだいたい1泊2日とか2泊3日で、ずっと風呂に入ってるわけにもいかないから何か手軽に楽しめるイベントが欲しいですよね。食事とお風呂の間に何をしようみたいな。体を動かすイベントがあると、ちょっといい汗をかいてお風呂でさっぱりっていうストーリーができるんですよ。
田村氏: 丸太橋とかね。地元の方の推薦ですけど、ああいうところが観光のスポットになってると、また発見がいろいろあるんですよ。
杉山: チェックインスポットの説明のところに、何でここがスポットになったのか由来が書いてあるんですね。
田村氏: 実はこういう歴史があるんだとか、チェックインスポットから観光や施設の公式サイトへのリンクも張れますから、もっと深く知りたかったらそこをスマートフォンでパッと見ていただけます。
杉山: スタンプラリーのために大きな看板やスタンプ置き場を作るとか、それを管理する人が必要ってことは、デジタルスタンプラリーにはないですね。ボクは説明看板ってその場で読まなくて、スマートフォンで撮ってあとで読むほうが多いです。
田村氏: テクテクからのリンク先を読めば、あとでもじっくり学びを深められる。
近藤氏: それもデジタルの利点ですよね。スマートフォンの中に無限に情報を入れられる。
田村氏: テクテクライフでは、スタンプラリーで集めた各スポットの画像はアルバム形式で見られて、そこから各スポット情報に飛べる。いわば旅の復習ができます。それから「となりぬり」という機能があって、これが旅の予習といえそうです。
杉山: すでに行ったところの隣の地域を実際に行かなくても塗りつぶせる機能ですね。
田村氏: 家で「次はこっちにも行ってみよう」と茶色に「となりぬり」して、そこをリアルに現地を旅して緑色に塗りかえす「現地ぬり」という遊び方ができるんです。訪れる前に「となりぬり」しながらスポットの情報も見られて予習できます。
杉山: 予習、実習、復習、ひとつの旅を3回楽しめますね。
近藤氏: そういう風に楽しんでいただこうと思って、スポットの解説文は気合い入れて書いてあるんです。説明文はこれから始まるほかのラリーでも濃いめに書いていきます。今回は大半を僕が書いてるんですよ。スポットの写真もほぼ自分で撮りに行きました。
杉山: そうか、元新聞記者ですもんね
田村氏: 僕らはチェックインスポットの設定まではできます。でも、全国に設定したスポットで、ちゃんと中身を説明できてるところはそんなに多くないんです。ユーザーさんからスポットの写真や説明文を募集しているんですけれど、反映が間に合わない……。近藤さんはコンテンツも作って宣伝もやってくれて、地域とも話をしてくれて、ほとんどやってくださいました。
近藤氏: これまでの関わりから沿線の各自治体の方にもお話ししやすいですしね。
杉山: こういうプロジェクトは、ワンストップで話が通じる人がいないとまとまらないですよね。
田村氏: これからいろいろな地域で、いろいろな立場の方と関わっていくと思います。最初の一歩だった今回の釧網本線めぐりは手探りでしたが、全部一気通貫でできる近藤さんのような方がいたので実現できたともいえます。
関連記事
- ベックスコーヒーに「月27.7回」も! JR東日本のサブスクは、どのように使われたのか
7月から8月にかけて、JR東日本がサブスクを展開していた。カフェを利用できたり、そばのトッピングができたり、シェアオフィスを使えたり。結果、消費者はどのように使っていたのだろうか。データを見ると、おもしろい結果がでていて……。 - “日本一高い”北総鉄道は値下げできるのか 「やはり難しい」これだけの理由
千葉ニュータウンを走る北総鉄道は日本一運賃が高い鉄道の1つ。理由は膨大な建設費が運賃に乗っていたから。しかし6月23日発表の決算には、2022年に累積損失を解消、値下げを検討するとある。値下げされても残念ながら相場より高い運賃が続く懸念がある。そこで筆者が、確実に値下げする方法を考えてみた。 - 2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。 - 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。 - 列車が来なくとも、「駅」は街のシンボルであり続ける
京阪電鉄中之島線「なにわ橋駅」のコンコースに「アートエリアB1」という、産・学・NPOによる協創コミュニティーがある。ここで11月20日から22年2月27日に「鉄道芸術祭」が開催される。鉄道芸術祭のプレイベントで、筆者が鉄道芸術祭に参加するアーティストに向けて話した、駅の面白さを紹介する。 - 「悪質撮り鉄」は事業リスク、鉄道事業者はどうすればよいか
有料道路を走る暴走族は、道路会社にとってお客様ですか。これと同様に「悪質撮り鉄」は、他の撮り鉄だけではなく、鉄道趣味、旅行ビジネスに悪い影響を与えている。本来、鉄道事業者が守るべきは「お客様の安全」であり、彼らはそれを脅かす存在だ。毅然とした態度が必要となる。 - 鉄道模型は「走らせる」に商機 好調なプラモデル市場、新たに生まれた“レジャー需要”
巣ごもりでプラモデルがブームに。鉄道模型の分野では、走らせる場を提供する「レンタルレイアウト」という業態が増えている。ビジネスとしては、空きビルが出やすい今、さらなる普及の可能性がある。「モノの消費」から「サービスの消費」へのシフトに注目だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.