SFA・CRMの「入力が面倒くさい」「活用しきれない」を防ぐためのチェックリスト:よくある失敗から学ぶ!(4/4 ページ)
SFAやCRMの導入が進み、営業活動において“なくてはならない存在”になりつつある。一方、「入力が面倒くさい」「活用し切れていない」との声も多い。よくあるSFA・CRM活用の失敗パターンに触れながら、どうすればうまく運用できるのかを考える。
Step(6)責任者と責任範囲を決める
利用するツールが決まったら、社内で適任の方に責任者をお任せします。
システム=バックオフィス業務と考えて、営業経験がない方を責任者としてアサインすることがよくあるのですが、SFA・CRMツールに関しては、“現場のリアルをどれだけ知っているか”が効果的に活用するためのポイントになってきますので、営業経験者が適任です。中でもできれば、成果を上げている方にお任せするといいでしょう。
このフェーズで私が必ずおすすめしているのは、「SFA・CRMの責任者」と「ツール構築担当」を分けることです。
どんなツールだとしても機能を修正したり、見せ方を変えたりする作業は簡単ではありません。別々の数字に関連性を持たせようとする作業は、プログラミングに近いコードを書くこともあり、初心者だとかなり工数がかかってしまいます。そうなると、作業だけで一杯一杯になってしまい、本来の目的に沿った運用ができているかのチェックや、可視化されたデータの分析ができなくなってしまいます。そのため、計画を立てる人と、実際にツールを構築する人を分ける必要があるのです。
また、責任者のアサインとセットで責任範囲を明確にしておくことも、必須といって過言ではないでしょう。
Step(7)ベンダーと密接にコミュニケーションを取る
ここまでで、SFA・CRMの導入と運用の難易度が低くないことは理解いただけたと思います。
その時に、助けになってくれる存在が各ツールのベンダーです。ベンダー側もツールをうまく使ってもらい、売り上げが伸びることを望んでいますので、基本的には親身になって対応してくれます。ここでしっかりと導入目的や課題などを共有しておくことで、他社の事例や自社に合った使い方を提案してもらえるので、コミュニケーションをサボらずに中長期的な関係性をつくりましょう。
Step(8)運用ルールを決める
ツールが決まったら、具体的な社内での運用ルールを決めます。ここでは、現場のマネジメント層を巻き込んで実現可能な運用ルールを設計することが重要です。
現場に伝える際はフワッと伝えるのではなく、しっかりとした場で明確な目的を伝えて、導入することで現場の動きがどう変わるのか、どんなメリットがあるのか、その上でなぜこのような運用ルールを設定したのかを伝えるようにしましょう。
また、こちらは実践できる企業が限られてしまいますが、可能な企業は一気に全社に導入するのではなく、まずは小さな組織から始めることをおすすめしています。どれだけ準備しても、実際に運用してみると想定外のことが発生するが場合があります。なので、そういった可能性をつぶし切った上で全社に展開していくプロセスを踏めると、結果的に一番スピード感のある導入につながるでしょう。
Step(9)改善し続ける
どんなことにもいえることですが、SFA・CRMも例に漏れず、最初だけではなく導入後に改善し続けることがとても重要です。状況が刻一刻と変わるのは、経営も現場も同じです。SFA・CRMは経営と現場のハブのような存在ですので、どちらの状況が変わっても、改善が必要になってきます。ここの改善がないと、最初は良くても結果的に使われなくなってしまったり、現場にとって工数を生むだけのものになってしまいます。
このような形でまとめてきましたが、一番重要なことは、その企業の課題解決にツールの導入が合致していること。そして現場では、「使わないと仕事ができない」「使い倒すのが一番成果が出るし楽」という状態にし続けることです。
導入ステップは以上となります。
ツール導入に成功している企業の共通点は、「導入だけで会社がうまくいく」という考え方ではなく、最初に経営や営業の課題をどう解決するかを考えて、「結果的にこのツールの導入が一番の解決策だった」という考え方を持っていることです。
次から次へとSalesTechのサービスが出てきていますが、表面的な魅力に飛びつくのではなく、しっかりと社内のリアルを見た上で、営業組織の課題設定をし、解決策まで考えることが、一番SFA・CRMを有効活用できる方法なのではないでしょうか。
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