成功する起業家にはなぜ“うつけ”が多いのか? 常識をやぶり、既成概念から自由に羽ばたく方法:大愚和尚のビジネス説法(2/4 ページ)
いつの時代も、「変わり者」と呼ばれる成功者がいるが、常軌を逸脱した行動は、時には「うつけ(バカ)者」と笑われることもある。では、持って生まれた何かが違う異端者でなければ、成功者にはなれないのだろうか? 「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶、大愚和尚(たいぐおしょう)に、成功者になれない人に足りないものは何かを聞いた(編集部)。
凡人であっても、不可能を可能にしている人がいます。凡人であっても、偉業を成し遂げた人がいます。では、その凡人たちは、一体何をしたのでしょうか。
「愚かさ」を自覚していたのです。成功者と呼ばれるようになった凡人は、もれなく、自分が「愚か」であることを自覚していました。徹底した「愚かさ」の自覚が、その人を成功者へと押し上げたのです。
「いやいや、大愚和尚。私は凡人ですけど、十分自分の愚かさを自覚していますよ。でも、成功できないんですよ」
そうおっしゃる人がいます。実は、成功できない凡人は、自分が本当に愚か者であるとは思っていません。愚かなのに、賢いフリをしてしまう。分かっていないのに、分かったフリをしてしまう。出来ないのに、出来るフリをしてしまう。どこかで自分を偽って、見栄を張って、小利口に生きている。
「愚かだ」と、口では自分を卑下しておきながら、心の奥底では、自分を「賢い」と思っている。だから、自分の愚かさを、見つめようとしないのです。
本気で愚か者を自覚したならば、もっと素直になります。本気で愚か者を自覚したならば、もっと謙虚になります。本気で愚か者を自覚したならば、もっと激しく、愚かさから抜け出そうと努力するものです。
まずは「落ちるところまで落ちてみる」のもいい
かく言う私も、賢いフリをした愚か者でした。そして、愚かであるがゆえの苦しみから、抜け出すことができずにいました。けれども、ある出来事をきっかけとして、生きることがずっと楽になりました。その、ある出来事とは、僧号をいただいたことでした。
「この修行から、もう降りたい」 そのとき師匠は――
私には「大愚(たいぐ)」という僧号がついています。僧号とは、僧侶としての名前です。この名には、「何にもとらわれない自由な境地に達した者」という意味が込められています。私が大学卒業後、本山で修行をしている期間の、一番苦しかったときに、師匠からいただいたものです。
御本山での修行期は、私にとって苦しみの絶頂期でもありました。家族や友人からの連絡を一切絶ち、俗世間のあらゆる刺激を断ち、髪を剃って、墨染めの衣を着て、ただひらすらに、修行に励む日々――。
朝4時に起床して、座禅をし、読経し、作務とよばれる清掃作業をこなし、心身ともにクタクタになって布団に入り、目を閉じた次の瞬間、朝を知らせる振鈴の音に飛び起きる。そんな毎日が続きました。
入山してわずか2週間で、体重が10キロ落ちました。疲労と、眠気と、不安と、焦りが、次々と襲ってきて、「こんな生活に何の意味があるのか」と、怒りや逃げの気持ちも沸いてきます。
無になって、懸命に修行に励んだら、心に安らぎを得られるかもしれない。そう考えて、ますます自分を追い込んでみるのだけれど、やっぱり心がザワついて、娑婆(しゃば)世界への未練が募るばかり。
3カ月もすれば、修行生活にも慣れます。修行が辛いのではない。修行を続けていても、人としての成長が微塵も感じられないことが、苦しかったのです。
「今ごろ同級生は、就職して、社会の色々な知識や経験を積んで、どんどん成長しているんだろうな」「それに比べて、自分は何をやっているんだろう。毎日お経を読んで、座禅して、掃除して、ご飯を食べて、寝るだけだ」。そんな思いが募って、居ても立ってもいられなくなり、師匠に手紙を送ったのです。
「もうここから、降りたいです」と。
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