性行為後に男を食べて妊娠するSF小説『ピュア』とその翻訳版が「1点もの」NFTに 狙いは?(1/3 ページ)
SF小説『ピュア』(作・小野美由紀)と、その2種類の英訳版が、それぞれ「一品もの」のNFT(ノン・ファンジブルトークン)としてオークションに出品された。小説をNFTにする先行事例は存在している。しかし日本のSF小説で、しかも英訳版を公開するプロジェクトは今回が初めてと見られる。
SF小説『ピュア』(作・小野美由紀)と、その2種類の英訳版が、それぞれ「一品もの」のNFT(ノン・ファンジブルトークン)としてオークションに出品された。記事執筆現在、大手NFTマーケットプレースである「OpenSea.io」に出品中である。誰でも仮想通貨「イーサリアム」で入札可能だ。
NFTはデジタルアートの新たな形態として注目が高まっているが、その可能性はまだ探求され尽くしていない。今回の試みの意義をビジネス的な観点から挙げると、(1) 作家だけでなく翻訳家のための新たな報酬モデルを開拓すること、(2) 日本SFの新たな世界展開ルートとなること、(3)契約とNFTの合わせ技で新たなビジネスモデルを実装することだ。以下、それぞれ説明していく。
男女の権力関係が逆転した衝撃的な未来像を描く
『ピュア』は、作家の小野美由紀氏が発表した短編SF小説だ。早川書房発行の『SFマガジン』2019年6月号に掲載された。同時にWebで全編を無料公開し、現在までに20万PV超のアクセスを得ている。20年4月には本作を含む短編集『ピュア』が早川書房から出版されている。
「もしも、女性がセックス後に男性を食べないと妊娠できない世界になったら?」。この衝撃的な発想に基づき、男女の権力構造が極端な形で逆転した未来を描くSF小説である。
小野氏は「『ピュア』にはさまざまな要素が重複している」と話す。「フェミニズムSFとして関心を持ってくれた人もいる。逆に、日本カルチャーが好きな人が読んでくれるかもしれない。表紙イラストに魅力を感じる人もいるだろう」(小野氏)
「ピュア」はエロスとバイオレンスを正面から描写した小説でもあり、暗黒の未来像を描くディストピア小説でもある。イラストレーター佳嶋(かしま)氏によるカバーアートは、分子ナノコンピュータにより進化した、美しく凶暴な異形の人物をモチーフとしており印象的だ。日本のコミックやアニメのサブカルチャーとの親和性を読み取る読み方もできるだろう。
この作品をNFTにする発想はどこから生まれたのか。
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