映画『アバター』の聖地も便乗、メタバースに群がるにわか専門家:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/4 ページ)
フェイスブックが社名を「メタ(Meta)」に変更し、「メタバース」への関心が急速に高まっている。実際のところメタバースの定義さえ曖昧だが、「メタバース元年」の中国では「金を産みそうな未来技術」として言葉が一人歩きし、ひともうけを企むインフルエンサーや企業が湧き出て収拾がつかない状況だ。
別のオンライン講座「最前線・メタバース6講」は29.9元(約530円)とお手頃価格が受けて既に約5万人が購入、売り上げは約2700万円に上る。こちらは合計1時間の講義を全て履修すると、英フィナンシャル・タイムズ中国版の顧問を務める主催者がサインした卒業証書を授与されるそうだ。
SNSには「メタバース連盟」などといったアカウント、オンラインサロンが大量出現し、無料のオンラインイベントを開催し、有料オフラインのイベントに誘導する組織も問題になっている。
メタバース商法の横行は、大手IT企業にとって大迷惑のようだ。テンセントやアリババ、バイトダンスが相次ぎ「アリババ・メタバース」「QQメタバース」など自社やサービス名と「メタバース」を組合わせた商標を申請しているが、新事業の準備ではなく他者に悪用されないための防衛措置と見られている。
検索ポータル・バイドゥ(百度)の馬傑副総裁は今月開かれた自社のイベントで、「メタバースでひともうけを考える企業は多く、どれが本物か見分けがつかない状態だ。今は期待値だけが上がっており、来年後半か再来年にはバブルがはじけると信じている」と苛立ちを隠さなかった。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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