映画『アバター』の聖地も便乗、メタバースに群がるにわか専門家:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/4 ページ)
フェイスブックが社名を「メタ(Meta)」に変更し、「メタバース」への関心が急速に高まっている。実際のところメタバースの定義さえ曖昧だが、「メタバース元年」の中国では「金を産みそうな未来技術」として言葉が一人歩きし、ひともうけを企むインフルエンサーや企業が湧き出て収拾がつかない状況だ。
世界遺産の武陵源に「メタバースセンター」
企業だけでなく行政機関でもメタバースに乗っかる動きが出た。
11月18日、湖南省張家界市の武陵源区ビッグデータセンター内に「メタバースセンター」が開設された。世界遺産「武陵源」を擁する張家界市は「メタバースの研究センターを設立した初の観光地」として、メタバースと観光の融合を推進すると宣言した。しかしメタバースと観光産業の成長がどう関連するのか具体的な計画は示されず、SNSで「何でもかんでもメタバースを絡ませればいいと思っている」とプチ炎上した。
張家界市はコロナ禍によって2年近く観光産業が打撃を受けており、今年夏には旅行者によるクラスターも発生した。観光業支援のため、バーチャ観光などDXに取り組んでおり、メタバースに光明を見出したようだ。
一方で、中国の報道によると当局の責任者は「武陵源はSF映画『アバター』の舞台になった場所であり、バーチャルを利用してリアルな世界を表現する方法を考えるのにふさわしい場所」とこじつけのような説明もしており、メタバースセンター設立が「便乗商法」であることも否定しなかった。
にわか専門家、オンラインサロンが大量出現
メタバースが何か分からないけど「乗り遅れたくない」「金もうけのチャンス」という焦りを利用した情報商材、専門家、悪徳商法も次々に現れている。
フェイスブックが社名変更した10月末には、オンラインの「メタバース入門講座」が登場。世界で最初の「メタバース」書籍シリーズの著者で、多くの大企業のアドバイザーを務める「中国の(米カリスマ投資家)メアリー・ミーカー」なる人物が、「メタバースの始まり」「メタバースの特徴」「メタバース経済学」「メタバース六大技術マップ」「メタバースの投資機会とリスク」を講義する講座は、キャンペーン価格688元(約1万2000円)で販売されている。
「688元でメタバースの10年が分かる」「メタバース時代に資産数十倍、数千倍も夢じゃない」など煽り文句が並ぶ同講座は、10日で2500人が購入したという。
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