未来の経営層はどう育てる? グローバルで戦う日本企業に欠けがちな視点:「ニューノーマル×グローバル」に勝つ人事(3)(1/4 ページ)
未来の経営者を育てるためのタレントマネジメントについて、グローバル展開する日本企業に欠けがちな視点とは?
連載:「ニューノーマル×グローバル」に勝つ人事
日本企業が、グローバル市場で求められる組織能力を獲得し発揮するために必要なことは何か──。
本連載の初回では、ニューノーマル時代のグローバル経営では、本社がグループとしての方針を明示し浸透を図りながらも、各所でさまざまなレベルのイノベーションを誘発し、その成果を全体に共有するスタイルが強く求められるようになると述べた。
グローバル人材マネジメントも一層の進化が求められており、本社と海外拠点を区分せずグループ全体を対象とし一体的に取り組みを実行していくことが肝要である。本記事では、着目している3つのポイントのうちタレントマネジメントの変革について解説する。
タレントマネジメントとは何だろうか?
採用、育成、異動・配置、パフォーマンスマネジメントなどの幅広い分野の活動を含むもので、広義では「経営目標の実現を目的として、事業上必要な人材を採用し育て、活用する一連の活動」と捉えられる。
しかしここでは、こうした一般的な理解よりもやや狭く捉え、グローバル経営に直結する将来の経営層を中心とした優秀な人材の特定・育成・活用に限定して議論したい。
将来の経営層を育む「グローバル一体型」のタレントマネジメント
こうしたタレントマネジメントの取り組みは、グローバル展開する日本企業において広く定着している。2000年代後半、遅くても2010年代の前半には、経営戦略を実現する上での優秀な人材の重要性が認められ、そうした人材に特化した人事施策が検討されるようになった。
典型的な施策としては、(1)キーポジションを特定した上でのサクセッションマネジメント、(2)その前提となる人材プール構築のための選抜型研修の2つが挙がる。
これらの施策は、戦略起点でのリーダー層の育成という点では画期的で、本社の目が届きにくい海外拠点の人材の登用といった一定の効果をもたらしたと評価できる。
ただし、こうしたタレントマネジメント施策の多くは、名称や目的にグローバルと銘打っていても、日本人を中心とした本社人材と、海外拠点人材を明示的・暗黙的に区分していることが多い。
本社人材に対してCXOや事業トップといった最重要ポジションのサクセッションマネジメントを進める一方、海外人材は地域や国レベルのポジションのみが対象になっているのが実情である(下記、図1参照)。
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