【後編】分からないことだらけの「インボイス制度」で経理業務はどう変わる? Peppolの基本も含めて徹底解説:対談で学ぶ電帳法とインボイス(1/4 ページ)
TOMAコンサルタンツグループの持木健太氏とSansanの柴野亮氏の対談企画、後編テーマは、2023年10月に導入を控える「インボイス制度」。そもそもインボイス制度とは何なのか、なぜ導入されることになったのかといった基本に加えて、対応するために準備すべきことまで広く話を聞いた。
前編では、施行まであと1カ月となった改正電子帳簿保存法にそなえ、短い時間で「するべきこと」「できること」について語ってもらった、TOMAコンサルタンツグループ持木健太氏とSansan柴野亮氏の対談企画。
後編となる今回のテーマは、2023年10月に導入を控える「インボイス制度」。そもそもインボイス制度とは何なのか、なぜ導入されることになったのかといった基本に加えて、対応するために準備すべきことまで広く話を聞いた。
インボイス制度は「消費税の仕組みを明確にする」ためのもの
――あらためてインボイス制度とはどのようなものなのか教えてください
TOMA 持木:現行の請求書は、「区分記載請求書等保存方式」と呼ばれる記載方式になっており、10%と8%の税率ごとに税込合計金額の表示が求められています。インボイス制度における「インボイス」とは「適格請求書」という意味です。今までは税率と税込合計金額の記載だけでよかったところ、インボイス制度では適用税率と、税率ごとに区分した消費税額を明記しなければなりません。
例えば、10%なら「税込1100円(10%)」、8%なら「税込1080円(8%)」でよかったものが、インボイス制度導入後は「税込1100円(10% 内消費税額100円)」「税込1080円(8% 内消費税額80円)」と細かく入力する必要があります。加えて必要なのが、課税事業者の「登録番号」の明記です。
Sansan 柴野:10月1日から番号登録の申請の受付が開始しました。
TOMA 持木:はい。インボイス制度により、請求書業務は発行側も受領側も今までにない作業に追われることになりますね。
数千億円規模!? 見過ごされていた「対価1.1倍」の益税解消へ
――そもそもインボイス制度はなぜ導入されたのですか?
TOMA 持木:「正確な消費税額を把握し、正しい税率を確認できるようにするため」でしょう。現在は、軽減税率の採用によって複数の税率が存在しているので、仕入れにかかわる合計金額だけでは消費税額の把握ができないんですね。10%と8%の消費税が混在している中で、本当は支払った税率が8%だったのに、10%と嘘をついて2%の不正利益を得る人もいるかもしれません。まずはそこを整備することが導入理由の一つです。そしてもう一つが、益税対策ですね。
Sansan 柴野:ここにかかわるのが、登録番号ですね。
TOMA 持木:そうです。現行法の制度では、免税事業者に納税義務はありません。しかし、合法的に1000円のものを1100円で請求できるんです。この100円部分が益税です。
Sansan 柴野:それが免税事業者の実質的な収益になっているわけですよね。ただ、最初3%だった消費税が今では10%ですから、これは大きいはず。
TOMA 持木:現在、発生している益税は、数千億円規模だといわれています。日本ではじめて消費税が導入された当時、私は近所の駄菓子屋さんで「このお店は消費税を納めていないはずなのに、なぜ税込金額を払わないといけないのだろう」と子供心に思いました(笑)。
Sansan 柴野:今、免税事業者の対価は自動的に1.1倍になっているともいえますよね。
TOMA 持木:しかし国としては、どうにかして税収したい。もともと日本は消費税率が低い国なんです。益税がある限り、消費税を上げると同時に益税が増えていく。インボイス制度は、軽減税率の対応、益税対応、その両面で「消費税の仕組みを明確にして、確実に回収できるような制度に変えていきましょう」という取り組みの第一歩だといえます。
――登録番号があることで、なぜ益税対策になるのですか?
Sansan 柴野:登録番号は、課税事業者しか取得できません。課税事業者であった場合、事前に登録申請をして登録番号を取得し、送付する請求書に明記する。インボイス制度導入後、「仕入税額控除」を受けるためにはこれが必須になります。
――仕入税額控除とは……?
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