月経による労働損失は4911億円 経営者が実践すべき「女性の離職を減らすための健康経営」とは?:2030年には187万人の労働力が不足(4/5 ページ)
人材確保のためには女性特有の疾患を理解した「健康経営」を進めることが重要だと語るのは川島労働衛生コンサルタント事務所代表、産業医の川島恵美氏だ。月経による労働損失は4911億円とも試算される中、経営者が女性の離職を減らすための要諦とは?
女性活躍を促進するためのアプローチ
以上のような女性特有の疾患の影響を踏まえて、医療や介護の現場で女性が活躍するためのアプローチを6点挙げてみます。
1点目は柔軟な休暇制度や勤務形態を採用することです。コロナワクチンの接種を進める際、医療従事者が不足して、潜在看護師の活躍が期待されましたが、現場復帰はなかなか進みませんでした。その理由は、就業可能な時間帯がかみ合わなかったからです。
私がワクチン接種をしていた職場では、1日あたりの勤務時間を短くする、午前・午後と選択できるなどの施策を設定していたため、看護師の確保に困ることは一切なく、無事接種を終えることができました。難しいとは思いますが、勤務時間や曜日が選択できて、突発的な休みにも対応できることは、働く女性にとって大きなメリットになり、離職率の低下につながる可能性があります。
2点目は適切な人員配置です。育児休暇から復帰した後の職員をプライベートやキャリアを考慮して配置することです。労働生産性の向上に効果があり、結果的に経営的にもプラスになります。
3点目は、婦人科がん検診の推奨です。前述したように、就労世代では乳がんや子宮頸がんに罹患する人が少なくないので、がん検診を推奨し早期発見と早期治療を行うことで、長期の傷病休職を防ぐことにつながるのではないでしょうか。検診を受ける時間を確保する、院内で受診できるようにするなどが挙げられます。民間企業では大企業中心ではありますが、関心が高い対策の一つです。
4点目は女性の健康について情報提供をすることです。女性に関するヘルスリテラシーが高い方が、プレゼンティズム(健康の問題を抱えつつも仕事をしている状態)が大幅に少なく、PMSを経験したときのパフォーマンスが優れていることが報告されています。全員が知識を持つことで、自分だけでなく同僚の不調にも気付きやすくなります。
5点目は相談窓口の設置。特に病院は一定の知識があって、ある程度自己解決できる従業員が多いため、産業医が機能しづらい職場です。不調に気付くためには、また気付いた時にすぐに相談できる場所として、院内に相談窓口を設置することは有効な方法の一つです。
6点目はメンタルヘルス対策。女性のうつ病の有病率は男性と比べて2倍といわれています。燃え尽き症候群の頻度も女性の方が高いです。こうした症状は女性管理職に起こりやすいことも分かっています。女性の管理職が多い医療や介護の現場では、メンタルサポートの強化は働きやすい環境を作るために欠かせません。
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