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“ラーメンの鬼”佐野実の娘が明かす「ラーメンの新境地」 父になかった「支那そばや」の哲学とは変えるものと変えないもの(3/4 ページ)

ラーメンの人気店として知られる「支那そばや」。支那そばやの運営に関わり、東京ラーメンストリート店を切り盛りしていたのは“ラーメンの鬼”の娘、佐野史華さんであることはあまり知られていない。史華さんが店に立つ上で大切にしているものや、ラーメン店を経営する上で大事にしているものは何か。話を聞くと、父とは対照的な哲学が浮かび上がってきた。

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渾身の一品「桃の冷やしらぁ麺」

――史華さんは17年、今でも夏季限定メニューとして提供している「桃の冷やしらぁ麺」を考案しました。斬新なメニューでしたが多くの人に受け入れられ、ヒットしましたね。

 最初はみんなも驚いていました(笑)。私が桃を好きだったこともあるのですが、桃はパスタなど他の麺料理にも使われているので、ラーメンでもいけると思っていました。タレは「ぶしゅかん」というのがあるのですが、これを使用しています。ぶしゅかんは高知の四万十で取れるのですが、父が亡くなる前に最後に見に行った食材だったんです。その時、父がぶしゅかんをすごく気に入っていたので、ぜひメニューに使いたいなと思っていました。

――桃の冷やしらぁ麺は例年、戸塚の本店で夏季限定メニューとして出していますが、今年は東京ラーメンストリート店のみで提供しました。反響はどうでしたか。

 東京駅では他にも塩らぁ麺や担々麺など、何種類か限定メニューを提供したのですが、その中で一番杯数が出たんです。意外なことに、女性よりも男性に人気で、週末は3人に1人が桃の冷やしらぁ麺を頼んでいました。メニュー考案者としてはすごくうれしかったですね。あまりの人気に、お店の名前も「桃そばや」に変えようかと冗談も言っていました(笑)。

――お父さまの佐野実さんとの思い出で印象に残ることはありますか?

 印象に残っているのはいろいろあるんですけど、朝ご飯を作ってくれた思い出がまず思い浮かびますね。普段は自宅で試作以外の調理をしないのですが、たまに早朝から大量に朝ごはんが出てくるんです。朝4時とか5時ぐらいに「ほらできたぞ」と起こしてきて、メガネをかけても目が開いていない状態でホタテやアワビが盛られた中華丼や、アワビのステーキが出来上がっている。父の料理を朝早くから食べたのは思い出に残っています。

――史華さんにとって、父・実さんはどんな人だったんですか。

 テレビはあまり見ていなかったので、「ガチンコ!」などのテレビ番組で取り上げられているような、仕事をしている父の姿は知らなかったんですね。家ではすごく優しい人でした。ラーメンに対してはテレビでも描かれているあの姿勢のままなのですが、それ以外のことに関してはすごく優しいんですよね。

 ただ、料理のことを常に考えていたなと思う場面もありました。父と一緒に出掛けることもあったのですが、行き先は飲食店だらけなんです。洋食店やお寿司(すし)店など、ラーメン店以外ですね。そういうお店をいくつもはしごして、常に料理の研究をしていました。それ以外の場所に一緒に行った思い出がないです(笑)。


桃の冷やしらぁ麺

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