次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/8 ページ)
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。
動き出す「73年組」
72年に告示された路線のうち、九州新幹線(鹿児島ルート)は完成し、そのほか3路線は未完成ながら一部開業、開業予定だ。北海道新幹線は札幌で一段落。北陸新幹線は新大阪開業の方向で動く。西九州新幹線は未開通だけど、佐賀県問題で停滞している。
ならばそろそろウチの番だ、とばかりに73年組が動き出している。報道を追ってみると、最もロビー活動が活発な路線は四国新幹線だ。毎年のように四国新幹線整備促進期成会の大会が開催され、国土交通省、財務省、自民党本部に要望を伝えている。そればかりか、徳島県、香川県、香川県、高知県が複数回にわたり要望活動を実施し、経済団体も活発だ。
21年は新型コロナウイルスの影響もあり落ち着いているけれども、愛媛県新幹線導入促進期成同盟会が7月に政府へ、10月にJR四国とJR西日本へ要望書を手渡している。タレントを起用したローカルテレビ番組を作ったり、SNSも活用して市民への周知も始めた。
四国が一丸となって推進している計画は、基本計画のうち、四国新幹線の徳島市附近〜高松市附近〜松山市と、四国横断新幹線の岡山市〜高知市を一括で整備する。14年の試算で事業費は1.57兆円。経済波及効果は年間169億円で、費用便益比は1.03となった。費用便益比が1.0を超えれば経済効果アリと見なされる。経営的に苦しいJR四国を救う方法はこれしかないという声もある。
開業目標は37年と定めたようだ。前出のように、リニア中央新幹線、北陸新幹線が新大阪に到達する年で、四国新幹線は山陽新幹線に乗り入れて新大阪を発着したい。新大阪〜香川・徳島・松山・高知は1時間15〜30分で結ばれるというし、リニア中央新幹線は品川〜新大阪間を67分で結ぶから、東京から四国各県は2時間〜2時間半程度で結ばれる。四国が近くなる。
「奥羽新幹線」「羽越新幹線」については、沿線6県で構成する「関係6県合同プロジェクトチーム」が17年から独自調査を開始し、21年6月に結果を発表した。東京〜山形間は現在より46分短縮されて1時間40分、山形〜秋田間は現在の3時間23分が42分になる。合わせると東京〜秋田間は2時間半以内だ。
奥羽新幹線の費用便益比は単線フル規格で1.13とかなり高い。羽越新幹線を同時に建設した場合は0.47〜1.08とのことで、条件によって変動が大きいようだ。国などへの要望活動はこれからといったところ。ただし、山形新幹線の遅延・運休対策として、板谷峠に新しいトンネルを建設する方向でJR東日本と協議が行われる見込みで、山形県はフル規格で建設し、将来のフル規格新幹線に対応したい考えだ。
「北陸中京新幹線」は、北陸新幹線敦賀〜新大阪間の検討ルートのひとつとして名乗りを上げたけれども選定されなかった。その後の動きはない。
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