次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/8 ページ)
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。
順番を待てなかった中央新幹線
「新幹線なんて、ちまちま作らないで一気にドンと開業すればいいんじゃ。東海道新幹線なんて5年3カ月で完成しただろうが」と、昭和時代の政界のドンならいいそうだけれど、現実はそうはいかない。
東海道新幹線が早く建設できた背景には、戦前の弾丸列車計画によって用地買収とトンネル工事が先行していた。現在のような環境アセスメントの概念はなかった。だからこそ、後に弊害として騒音に苦しむ沿線の人々から名古屋新幹線訴訟が起こされ、突貫工事と予想外の走行影響がのちに響いて、76年から82年まで44回にわたって平日半日運休してまで若返り工事を実施した。このときの設備強化が後の「のぞみ」誕生につながったという。
東海道新幹線は資金面も無茶をした。当時の国鉄総裁の十河信二が実際より低い見積で国会の予算案を通し、世界銀行から借り入れて「国と世界の約束事」として開業させた。後に予算が膨れ上がった責任をとがめられ、十河は引退。開業式にも呼ばれなかった。しかし、十河がいたから新幹線は開業できた。いまなら大炎上しそうな案件だった。
このような無茶はもうできない。国鉄が赤字解消の目的で分割民営化されて以降、国から鉄道への予算配分は小さくなった。新幹線は作りたい、でもお金はない。限られた予算を分散して配分し、なんとか作っていくという現状だ。
つまり、71年組の新幹線の目途が立つまで、72年組の新幹線は着手できないし、72年組の新幹線の開通の見通しが立つまで、73年組の新幹線関連予算は出ない。
この順番を待てなかった路線が中央新幹線だ。JR東海にとって、東海道新幹線の需要が旺盛な上に、建設から半世紀が経過し、施設の抜本的な更新が必要だった。将来的に長期運休の恐れも出てきた。東名阪の国の動脈を結ぶ責任者として、中央新幹線建設を急いだという経緯だ。
そこで自ら国の順序から外れた。従来の整備新幹線の枠組み「鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設し、JRが借りて使用料を払う」ではなく、JR東海が自社資金を調達して建設することになった。だから73年告示路線では中央新幹線のみが着工されている。
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