有名スーパーが“まさか”の勘違い 想定外だった利用客と、致命的な戦略ミス:客層分析をどうする(2/4 ページ)
「どんなお客さんが店舗を利用しているのか」をしっかり把握していないことがある。ある有名な総合スーパーは「ファミリー客がターゲット」だと思っていた。しかし、調査をしてみると……。
なぜ客層のズレに気付いたのか
冒頭の企業は、なぜその間違いに気づいたのでしょうか。それは、デジタル時代の今となっては信じられないほどアナログな手法で分かったのです。商品力に問題があると捉えたその企業は、来店客にインタビューを実施することにしました。調査を依頼されたコンサルティング会社が、「せっかく店舗にいるなら」と店舗にいる顧客の年齢と性別を記録し、グラフ化したのです。
本来の目的は、店舗でインタビューした内容をもとに、ファミリー層の顧客がどんな商品を求めているかを抽出することでした。しかし、最も驚いたことは“そもそもファミリー層が来ていない”という事実だったのです。
60歳以上をシニアと定義すると、その構成比がなんと70%を超えている店舗があったのです。特に平日の午前中はその傾向が顕著でした。
シニアが多い店舗のインタビューでは、想定もしていない声が多数寄せられました。
それは「そもそも私が欲しい商品がない」「私達高齢者の身体的不便を理解してくれている商品がない」「置いてある商品はデザインが若すぎる、かといってシニア向けの売り場にはダサいと言わざるを得ない商品ばかりが並んでいて着たいと思わない」というような意見です。
アパレルフロア全体で見ると、シニアが70%以上、特にアウターやかばんの売り場はその傾向が顕著でした。
しかし、ある1カテゴリーだけ、30代からシニアまで幅広く集まっている売り場がありました。
それが、インナーです。肌着の売り場にはサラリーマンからOL、主婦、シニアまで、デザイン性より機能性を求める顧客が多数訪れていました。
この傾向をいち早く捉え、インナーカテゴリーで日本のマーケットを席巻した企業が、ユニクロを展開するファーストリテイリングです。例に挙げたGMS企業がインナーの重要性に気付く何年も前から、同社は機能性の高いインナー商品を開発し、全ての世代から絶大な支持を得ていました。 今では“3世代全員下着はユニクロ”という家庭も珍しくないはずです。このインナーが強力な集客力となり、フリースやダウンなど他カテゴリーとの相乗効果を生み出しています。
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