40年以上続く「パートは低賃金でOK」 “女性の自立”を日本は認められるか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
連合は、2022年春闘で「ジェンダー平等」に取り組むことを打ち出した。女性初の連合トップである芳野友子会長は賃金における「ガラスの天井」を取り払うことを目指すという。なぜこれまでずっと、男女の賃金格差は放置されてきたのだろうか?
当時(1980年代)、日本では男女雇用均等法が施行され、社会には「均等法で会社に男女差別はなくなった」というイメージが膨らんでいました。しかしながら、女性の多くは正社員ではなく、パートで雇われ、「パートの賃金は安くて当たり前」というあからさまな性差別が、無分別に続いていたのです。
パートという呼称は、高度成長期に人手不足を補うために、専業主婦を雇った頃から、働く女性の代名詞として使われた言葉です。
1950年代、企業は「本工=正規雇用」より賃金の安い、「臨時工」を増やすことで生産性を向上させてきました。臨時工は、今でいう非正規です。
しかし、「安い賃金では家族を養えない!」と、臨時工の低賃金と不安定さは労働法上の争点として繰り返し議論され、大きな社会問題に発展。
そこで政府は、1966年「不安定な雇用状態の是正を図るため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実すること」を基本方針に掲げ、 1967年に策定された雇用対策基本計画では、「不安定な雇用者の減少」「賃金等の差別撤廃」を今後10年程度の政策目標に掲げます。
ところが、1970年代になると人手不足解消に、臨時工を本工として登用する企業が相次ぎ、臨時工問題は自然消滅。その一方で、主婦を「パートタイム」で雇う企業が増え、「女性は家庭を守る存在であり、家族を養わなくてもいい人たち」という共通認識のもと、「パート=主婦の家計補助的な働き方=低賃金でOK」とされてしまったのです。
本工と臨時工の格差問題では、「家族持ちの世帯主である男性の賃金が安いのはおかしい」という声に、政府も企業もなんらかの手だてを講じる必要に迫られましたが、パートは主婦だったため議論は全く盛り上がりませんでした。
現場でパートが量的にも質的にも基幹的な存在になっても、低賃金問題は置き去りにされ、どんなに婦人団体が抗議しても、「パートはしょせん主婦。男性正社員とは身分が違う」という意味不明の身分格差で反論されたのです。
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