美大生の進路はどうなっている? キャリアの実態:人材バリュー(4/4 ページ)
世間の人は美大生にどんなイメージを持っているでしょうか? 芸術に何の素養も持たない私ですが、秋田県にある秋田公立美術大学において、美大生のキャリア教育を担当してきました。 結論から言えば……。
実際の評価と問題
いくら技術がすばらしくても、どこかで見たことあるような作品に惹かれることはありません。技術はそこそこでも日々発想を鍛える美大生は、恐らく仕事においてのアウトプットも期待できると感じるのです。
キャリア担当教員である私は、この素養にビジネスとのブリッジができれば、非常に魅力的な人材になると信じています。
実際にコミュニケーションデザイン専攻の学生が、当時ニトムズ社のCM動画コンテストで1位を獲得するなど、一般企業からも評価を受ける、きわめて完成度の高い作品制作が実践できています。クリエイティブ職に限るものではなく、あらゆる職業で表現するコミュニケーション能力は有効だといえるでしょう。
こうしてゲームやWeb制作など広い意味でのでクリエイター系企業や、一般企業以外からも求人が集まっています。私もしっかりとした作品制作とキャリア教育のセットが実現できる美大生は非常に有望な人材だと自信をもってお薦めできます。
良いことばかりでは逆に信憑(ぴょう)性が下がるでしょうから、苦手なことも挙げたいと思います。
やはり文章表現中心のエントリーシートや偏差値的能力を測るWebテストは正直苦手という学生は多いですね。美大の受験偏差値ランキングなどもありますが、実に意味の無い指標だと思います。どれだけ筆記試験で良い点を取ろうが、美大生の強みである創作能力や表現能力は絶対に筆記試験では測れないからです。
私の担当時代、秋田美大は入試において実技を必修化していました。これは美大生という人材バリューを担保する上で、絶対に譲れない指標だと考えます。制作能力の無い美大生に人材価値はあるのでしょうか? 少なくとも入試でも制作能力がスクリーニングされ、課程において日々創作を重ねる美大生。人事的視点、経営的視点のいずれからしても、私はほとんどの企業において、一般職であっても活躍のチャンスが十分ある素材だと思います。
秋田という場所から一気に遠くへ行くのはためらう学生も一部にいる一方、逆に場所問わずにチャンスを求めて「動ける学生」がいるのも事実です。そうした自由な発想や感覚はやはり美術系だからでしょう。人手不足の企業の皆さん、ぜひ美大生も目を向けてみてはいかがでしょう。
次回は美大生に行うキャリア教育。どうやって一般企業とブリッジしていくかについても説明したいと思います。(増沢 隆太)
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