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「前任者がやらかしたことを検証してはいけない」 なぜ日本の会社でタブーなのか:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
「前任者がやったことを細かく検証してはいけない」――。多くの日本企業でこのような慣習があるが、なぜ責任の所在をうやむやにするのだろうか。背景を探っていくと……。
組織を守るため
では、なぜこれが「タブー」となったか。大きいのは「組織を守るため」だ。
これも日大を見ればよく分かる。先ほど申し上げたように、田中氏を役職につけなくても、大学への影響力はそう簡単になくならない。恩義を感じる者や、今でも忠誠心のある者が一定数いる。加藤学長自身もこれまで世話になってきた。それはつまり、「田中支配時代に彼がやったことをすべて検証しよう」などと言い出すと、立場を脅かされたり、責任を追及されたりして困る人々が大学内にたくさんいるということだ。
下手をすれば、「あいつも田中さんと仲良かった」「あいつはカネをもらっていた」なんてヒドい足の引っ張り合いが始まって、日大再生どころの騒ぎではなくなってしまう恐れもある。それを避けるために組織内ではどういう力学が働くかというと「クサイものにフタ」である。「いつまでも過去にとらわれてもしょうがない、大切なのはこれからだ」と叫んで未来に目を向けさせることで、田中支配の根本的な要因や、ガバナンス問題は「過去の問題」として闇に葬るのだ。
つまり、一見すると矛盾したような話に見えるだろうが、「組織を守るため、ガバナンス問題を先送りする」という選択をするのだ。
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