「4%賃上げ要求」は妥当か? 賃上げ騒動に覚える3つの違和感:これからの「労組」に求められるものは(3/4 ページ)
政府と連合が中心となり、賃上げを促す動きが出てきている。筆者は、この間の動きをウォッチしながら覚えた違和感があると解説する。果たしてその違和感の正体とは。
そもそも一律で賃上げすべきなのか
違和感の3点目は、賃上げそのものの是非です。
ほとんどの労働者は、賃上げを歓迎すると思います。しかし、主婦層のように扶養枠内で働くことを希望する労働者などにとっては、賃上げが望ましくない場合もあり得ます。
例えば、パートタイマーとして年収130万などの扶養枠ギリギリでシフトに入っている場合、一律に賃上げが行われてしまうと扶養を外れるか、勤務条件を変えて扶養内に収めるための対応が必要となります。
週3日勤務が基本だった人は週2日へと勤務日数を減らしたり、1日当たりの勤務時間を短くしたりしなければなりません。そのことがネックになり、かえって仕事が続けづらくなってしまったり、程よくシフトを組むことができず、逆に年収が下がったりするケースもあり得ます。
また、中には仕事自体が生きがいで、扶養枠内で収めつつ勤務日数や勤務時間を減らすことは望まない労働者もいます。扶養枠という仕組みを継続すべきか否かについては議論の余地があったとしても、現行制度の中では賃上げを望まない労働者もゼロではないのです。
少数派にも目を向けるべき
ここまで見てきたような賃上げに関連する3点の違和感は、いずれも労働者の中で少数派に分類される人の立場なのかもしれません。しかし少数派であっても、労働者であることに変わりはないはずです。
つまり、労働者と一言で括ってはいるものの、労働者同士の利害関係は必ずしも一致しておらず、連合の要求方針を見る限り、少数派の労働者の声が十分に反映されているとはいえないということです。では、連合など労働組合が声を代弁している労働者とは一体誰のことなのでしょうか?
関連記事
- テレワーク終了宣言? 経団連「出勤者7割減見直し」提言に潜む違和感の正体
経団連が出した提言が波紋を呼んでいる。コロナ対応を踏まえた、テレワークによる「出勤者数の7割削減」を見直すべきだという内容だが、経済界の「テレワーク終了宣言」と見えないこともない。 - 賃金は本当に上がるのか? 安いニッポンから抜け出せない、これだけの理由
選挙戦が盛り上がってきたが、ビジネスパーソンが気になるのは、やはり「賃上げ」だ。賃上げを達成するために、各政党は目玉政策を打ち出しているが、その中でひときわ目を引く「謎の政策」がある。それは……。 - 「一律賃上げは非現実的」 経団連が弱音を吐き、かつての「勝ちパターン」も崩壊した今、働き手はどうするべきか
春闘が開始も、経団連は「一律賃上げは非現実的」と方針を示した。過去には終身雇用の維持にも厳しい姿勢を見せて波紋を呼んだ。過去の標準的勝ちパターンが崩壊しつつある今、働き手は希望を叶えるためにどうするべきか。 - なぜ、7割超の日本企業は「五輪・緊急事態」でもテレワークできなかったのか
遅々として進まない日本企業のテレワーク。緊急事態宣言下の五輪期間中でも、その実施率は3割を下回った。なぜ、この期に及んで日本企業のテレワークは進まないのか。 - 上から目線? 経団連が発表した「教育界への提言」が、経済界へのブーメランなワケ
経団連が発表した教育界への提言は“喝”ともいえる内容で、至極まっとうなことをまとめている。その一方で、何となく違和感を覚える理由はどこにあるのか。 - 部下を自殺にまで追い込んでしまう「叱責妄信型」上司が犯している3つの過ち
トヨタ販売店や佐川急便など、上司による叱責を苦にして部下が自殺する事件が後を絶たない。こうした背景には、「叱責妄信型」の上司という存在があると筆者は指摘する。なぜ、こうした上司が生まれてしまうのか。そして叱責妄信型上司が犯している3つの過ちとは。 - 社員に「自己犠牲による忠誠」を強いる時代の終焉 「5%」がもたらす変化とは
企業が社員に「自己犠牲」を強いる時代が終焉を迎えつつある。背景にあるのは、企業と働き手の間にあるパワーバランスの変化だ。筆者は「5%」という数字に目を付け、今後の変化を予想する。 - 社員を「子ども」扱い? 野村HD「在宅勤務中も喫煙禁止」の波紋
野村ホールディングスが在宅勤務であっても喫煙禁止とする施策を発表し、波紋を広げた。同社は健康経営の一環として説明するが、果たして効果はあるのだろうか。社員を「子ども」扱いする、安直なマネジメントではないのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.