旧車ビジネスが拡大するワケ レストアでクルマは新車状態に:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
日産自動車とその関連会社や部品メーカーが、30年乗り続け26万キロもの走行距離に達した日産シーマを8カ月かけてレストア作業を行い、新車のような状態まで復元したことが話題になっている。
新車のように復元するレストア
レストアとは、単なる分解組み立てとは異なり、まるで新車のように機能と見た目を復元するものだ。日産が公開した画像を見るだけで、レストアされたシーマが新車と見紛うほどのクオリティに仕立てられているのが伝わってくる。
エンジンやトランスミッションは分解して各部の摩耗などを確認して、部品交換や修正加工などを行って組み立て直す。機能を完全によみがえらせる、という点ではリビルドといっていいが、レストアとなると外観の見た目も重要となり、仕上げや部品交換のレベルが数段高まる。
レストアされた伊藤かずえさんのシーマのエンジンルーム。まるで新車のようにキレイだ。機能を取り戻すだけでなく、金型が残っていた樹脂部品は新たに作成するなど、関係した企業によるコスト度外視の協力があって実現したものだ
それでもレストアは完全に新車の組み立て工程と同じ品質、内容ではない。新車の生産ラインは効率を追求しているだけでなく、その後の耐久性も考慮した仕様となっているが、それは大量生産だから可能となる手段も多いからだ。
例えばボディの塗装に関してだ。生産ラインでは自動的にボディシェルに塗料を吹きかけ、電気ヒーターによる焼き付けを繰り返す。件のシーマの場合4コート4ベイク、すなわち4回の塗装それぞれに焼き付け処理を施してそれぞれの塗膜を強固なものにしている。
一方、レストアの場合に使用されるのは補修用塗料であり、ハンドガンによる職人の塗装技術によって、見た目には同じ質感を再現できるものの、塗膜の強さは新車塗装には敵わない。
今回のシーマの場合、ダッシュボードやリアウインドウは取り外さずに塗装ブースに運ばれていることから、完全にモノコックボディだけの状態にまで分解されたわけではなさそうだ。それはその周辺に錆(さび)などが見当たらず内部の状態も悪くないと判断されたからであろう。
また4ドアハードトップというBピラーを持たない構造ゆえ、本来のボディ剛性は決して高くない。さらに経年劣化により剛性の低下が起きていることは避けられないが、丁寧に扱われてきたことと、今後も大事に乗られることから、それほど重視されないのであろう。日産の評価ドライバーが試乗して、走行性能は確認されているらしい。
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