「今のうち、切っちゃえ!」と続く黒字リストラ──厳しくなる労働環境の中、生きる策:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
希望退職を募る企業が増えた2021年。コロナ禍で業績不振な企業だけでなく、いわゆる「黒字リストラ」を行う企業も少なくない。終身雇用が崩壊し、厳しくなる労働環境の中、私たちはどのような心構えで働くべきなのか──?
希望退職の拡大が止まりません。
8月には、ホンダが「55歳以上を対象」にした早期退職を実施しました。一部の報道によれば、業績は悪いわけではなく、米国での販売が大幅に回復しているとのこと。いわゆる、黒字リストラです。「今のうち、切っちゃえ!」とリストラに踏み切ったわけです。
さらに、11月下旬にはフジテレビも「勤続10年以上で50歳以上」の社員を対象に希望退職者を募ることを決定。希望退職募集の理由についてフジテレビは、「経営計画における人事政策の一環として、50代社員のセカンドキャリアの支援、及び今後の選択肢の追加として『ネクストキャリア支援希望退職制度』を実施する」としています。
希望する社員には、通常の退職金に加え、特別優遇加算金を支給し、再就職支援を実施するとのこと。今回の希望退職者募集で発生する特別優遇加算金は、2022年3月期決算で特別損失として計上する予定だといいます。
黒字リストラを行う企業は、コロナ禍の前から増えていました。
20年に早期・希望退職募集を開示した上場企業は93社です。募集社数は、リーマン・ショック直後の209年(191社)に次ぐ高水準で、19年の35社から2.6倍増と急増していました。
そして、コロナによりさらに増え、21年10月31日までの情報では、上場企業の早期・希望退職者募集を行った企業は72社、1万4505人に達しています。
つまり、19年から増えていた「今のうち、切っちゃえ!」という黒字リストラに、「もうムリ!」という赤字リストラが足されたのです。しかも、中には「コロナ後の事業再編」「コロナ後の企業戦略の一環」といった、コロナを言い訳にしたリストラも後を絶ちません。
関連記事
- 「指示待ち」「官僚的」な社風が一変 湖池屋の好業績の陰に“人事改革”あり その中身は?
湖池屋の業績が伸びている。もとは「指示待ち」「官僚的」だった社風を改革したことが、要因の1つのようだ。組織の文化や風土の変革など、湖池屋を変えた人事改革に迫った。 - “パートは低賃金で当然”の日本で、なぜ「全従業員を正社員化」できた? イケア・ジャパン人事に聞く
いわゆる「同一労働同一賃金法」より約6年も前に、イケア・ジャパンはパートタイマーを含め全従業員を正社員雇用に切り替えた。なぜそのようなことができたのか。イケア・ジャパン人事にインタビュー。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。 - 「営業は休めない」をどう解消? 積水ハウス、男性育休「100%・1カ月以上」実現のワケ
積水ハウスの男性育休取得率は100%、取得期間も1カ月以上と長い。しかし、始めからスムーズに制度が受け入れられたわけではない。従来は男性の育児休業の平均取得日数は2日程度で、「営業職は休めないだろう」という声も多かった。積水ハウスではどのように風土を変え、男性育休を定着させたのか。話を聞いた。 - 「残業しない」「キャリアアップを望まない」社員が増加、人事制度を作り変えるべきでしょうか?
若手や女性を積極的に採用したところ、「残業はしない」「キャリアアップを望まない」という社員が増え、半期の評価ごとに成長を求める評価制度とのミスマッチが起きている──こんな時、人事はどうしたらいいのだろうか? 人事コンサルタントが解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.