米国が直面する「大退職時代」――若手人材を中心に、日本企業にも到来しそうなワケ:2021年のニュース振り返り(2/4 ページ)
今、米国では多くの労働者が退職し、新たなキャリアを歩み始める「大退職時代」を迎えている。2021年のニュースを振り返るに、この波は日本にも到来しそうだ。特に、若手人材を中心に……
東京商工リサーチが実施した「早期退職やセカンドキャリアに関するアンケート」によると、早期退職・セカンドキャリア制度を導入している企業のおよそ3分の2に当たる66.5%が、対象年齢を50歳以上に設定しています。なぜ一定の年齢で線を引いて対象者を絞るのでしょうか。ここには、次のような不文律の存在が影響していると考えられます。
「早期退職を募るなら、シニア社員を対象とする」
「組織体質を改善するために、シニア社員は若手社員に道を譲らなければならない」
「シニア社員は能力が発揮できないので、役員以外は早期退職が望ましい」
また、政府が20年代の可能な限り早期に30%へ引き上げたいとしている女性管理職比率についても、背景に不文律の影響を感じます。
帝国データバンクによると、21年の女性管理職比率は平均8.9%と1割を切る水準にとどまりました。
女性管理職比率が伸び悩むのは、女性の正社員比率が男性の半分程度であることが大きな要因の一つですが、次のような不文律が根付いている会社があることも見過ごせません。
「女性は管理職に向かないから登用しない」
「管理職希望者が少ないから、女性は管理職候補と見なさない」
「女性には家事や育児と両立できる働き方が望ましい」
会社内にこれらの不文律が根付いてしまうと、もし管理職になりたいと考える女性社員が出てきても、実現するのは難しいはずです。
残念ながら今年も度々起こった、上司のパワハラで社員が自ら命を絶ってしまう痛ましい事件。それらの背景にも次のような不文律の影響が垣間見えます。
「上司は会社のためなら、部下を恫喝(どうかつ)しても構わない」
「年上であろうが、上司は部下に対して高圧的な態度や言葉遣いをしてもよい」
「仕事ができない社員は、サービス残業するのが当然だ」
不文律も使いよう?
ここまで挙げたような不文律は、当然ながら明文化された決め事ではありません。にもかかわらず、いったん社内に浸透すると、一種の支配力といってよいほどの力を発揮します。
ただ、不文律は必ずしも悪いものとは限りません。
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