米国が直面する「大退職時代」――若手人材を中心に、日本企業にも到来しそうなワケ:2021年のニュース振り返り(3/4 ページ)
今、米国では多くの労働者が退職し、新たなキャリアを歩み始める「大退職時代」を迎えている。2021年のニュースを振り返るに、この波は日本にも到来しそうだ。特に、若手人材を中心に……
例えば「社内では役職名ではなく、互いに“さん”をつけて呼び合う」という不文律がある会社は、社長や部長など地位が高い人に対しても、親しみやすい関係性が築けるかもしれません。社内に好ましい文化を醸成したい場合においても、不文律は重要な役割を果たします。
厄介なのはその不文律が理不尽な場合です。先ほど挙げた「早期退職を募るなら、シニア社員を対象とする」という不文律には、決して合理性があるとはいえません。世の中に優秀なシニア社員はたくさんいるからです。年齢が高いという理由だけで、早期退職の対象にするという理屈は、乱暴で年齢差別だとさえ感じます。
「管理職希望者が少ないから、女性は管理職候補と見なさない」という不文律も、合理的といえません。仮に数は少なくても、管理職を希望する女性はいます。また、そもそもなぜ管理職を希望する女性が少ないのかを考え、原因に目を向けることも必要なはずです。
結婚や出産を経ると、多くの家庭では女性が家事育児の中心になります。しかし、それは性別役割分業を前提とした考え方です。世の中に性別役割分業意識がはびこっていると、必然的に女性は家事や育児との両立を踏まえて仕事を選ばざるを得ず、管理職を希望しづらくなります。「女性には家事や育児と両立できる働き方が望ましい」という不文律も、同様に性別役割分業が前提となった考え方なのです。
「上司は会社のためなら、部下を恫喝しても構わない」という不文律については、そもそも「恫喝しても構わない」という考え方自体に合理性がなく非常識です。しかし、新人の頃から上司の恫喝に耐えながら育ち、鍛えられてきたという自負を持っている社員たちが集う会社では、合理性を欠いた非常識な不文律であっても受け入れてしまう風土や文化が醸成されてしまいがちです。それが日常的にパワハラを生み出す温床となり得ます。
日本に数多ある会社組織は、それぞれが個別のムラ社会を形成しています。“理不尽な不文律”に疑問を抱く社員がいたとしても、下手に疑問の声を上げようものなら、協調性がないとレッテルを貼られてしまいかねません。そのため、“理不尽な不文律”は誰からも否定されることなく、保持されていきがちなのです。
しかしながら、そんな“理不尽な不文律”を社員に押しつけてマネジメントできた時代は、そう長くは続かないかもしれません。
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