松屋銀座で使える日本円連動ステーブルコイン「JPYC」が伸びている理由(3/5 ページ)
ステーブルコイン「JPYC」がじわじわと使われ始めている。JPYCとは仮想通貨イーサリアムのブロックチェーン上で発行された「前払式支払手段扱いのステーブルコイン」だ。JPYC社が1月に発行を開始した。発行総額は11月時点で3億円超。日本で個人が入手して利用できる円建てデジタル通貨としての存在感を持ってきた。
現状は、ややマニアックなユーザー向け
現在JPYCを使っている人たちは、ややマニアックな人たちだ。前出のJPYC岡部氏は「JPYCは、主にPolygon(ポリゴン)上で使われています」と語る。Polygonと聞いて腑(ふ)に落ちる人向けのものともいえる(Polygonとは何か? それはこの後でちゃんと説明する)。
「仮想通貨は仮想通貨取引所で売買するもの」と認識している人もいるだろうが、JPYCは今のところ仮想通貨取引所では取り扱われていない。自己責任で、ブロックチェーンを直接いじる人たちに向けたデジタル資産なのだ。
JPYCを入手して利用するには、ユーザーにある程度の知識が必要だ。JPYCを利用するにはウォレットソフトMetaMaskと、イーサリアム互換の高速ブロックチェーンPolygonのユーザーになることが、ほぼ不可欠となっている。これらの基本的な扱い方は知っていないといけない。
イーサリアムの「支流」Polygonで流通
JPYCを使うには必須となるMetaMaskとPolygonについて簡単に触れておこう。MetaMaskはJPYCで推奨されているウォレットアプリである。もともとは仮想通貨用イーサリアムのためのウォレットだが、イーサリアムの技術を利用するJPYCも同様に扱うことができる。そしてMetaMaskは後述するPolygonにも対応している。
MetaMaskは「秘密鍵」を自己責任で管理するタイプのウォレットだ(ノンカストディウォレットともいう)。利用開始するときには「リカバリーシード」と呼ぶ秘密鍵を表す12の単語を紙に書き留める。リカバリーシードは秘密鍵を表現しており、秘密鍵を失うと資金を取り戻せなくなる。この種のウォレットで知識と自己責任が求められる理由だ。
Polygonはイーサリアムと同等の使い勝手を実現しながら、手数料が3桁ほど安く、処理時間が短い。いわば高速なイーサリアム互換ネットだ。現在イーサリアムは慢性的に混雑し、手数料が高騰している。JPYCは、イーサリアム、Polygon、xDai、Shidenと複数のブロックチェーンで利用でき、また暗号通貨を手数料ゼロで「投げ銭」できる機能を備えたメッセージングアプリ「Links」でも利用できる。今のところJPYC利用者の多くはPolygonを使っている。
イーサリアムの手数料は大きな問題となっている。混雑具合によるが、送金だけで数百円の手数料が発生する。さらに仮想通貨取引所から仮想通貨をウォレットに出金するときにも、取引所や相場にもよるが2000円台といったバカにならない金額の手数料が発生する。それに比べると、PolygonとMetamaskによる送金は天国のように快適だ。JPYCを送る手数料は、日本円換算で1円未満で済む。
先日、Polygonの日本の利用者が集まるオンラインイベントが開催された。そこでPolygonに関する日本のパートナー企業で筆頭に名前が挙がったのがJPYCだった。JPYCは、日本のPolygonユーザーの間で人気を集めている。
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