「名門銀行子孫」のあっけない幕切れ 新生銀行・SBI・金融庁、TOB騒動の背景に三者三様の失策:迷走・モラル欠如・皮算用(4/5 ページ)
TOBを巡る、新生銀行とSBIの騒動がひとまずの決着を見た。しかし、本当にこれでよかったのかといわざるを得ない幕切れとなり、疑問点は尽きない。今回の騒動を振り返りつつ、かかわった金融庁の打算を交えながら、総括を試みる。
例えば、金融庁や財務省から多くのOBを受け入れて人的関係をつくり外堀を埋めてきたと思しき行動です。
女性記者に対するセクハラで実質更迭された福田淳一元財務次官をSBI社外取締役に、金融庁元総務企画局審議官の乙部辰良氏をSBIイシュアランスグループ会長兼社長に、同元総務企画局審議官長谷川靖氏をSBIの地方創生ビジネスを担う地方創生パートナーズ執行役員事務局長に。そして最強の天下り受け入れは、金融庁元長官である五味廣文氏をTOB成立後の新生銀行会長としてお膳立てしたことでしょう。これには綿密な準備がありました。SBIは先を見通して、五味氏を2017年にSBI社外取締役として迎えていたのです。
このように用意周到に手を回しつつ新生銀行TOBを仕掛け、最終的に思惑通りに決着たらしめたそのやり口には、業務改善命令を受けたモラル欠如の企業文化と相まってどうにもグレーな印象が拭えません。そもそも新生銀行の公的資金をどうやって完済するのかについても、現時点では至って不透明です。
前述の通り株価を完済水準にまで持ち上げることは不可能に近く、TOB成立後に会見した北尾氏から「公的資金返済に向け、非上場化も有力な選択肢」との発言はあったものの具体的な道筋の提示はなく、新生銀行の買収は「限界地銀支援」をネタに金もうけ手段に終わる危険性も感じさせられるのです。
金融庁も「痛いところ」を突かれたのではないか
一方の金融庁も、果たしてSBIが新生銀行を運営するに足る企業体であるか否かの観点から正当に吟味したのか、どうも腑に落ちない感が強いのです。なぜならば、時期同じくして起きた前述のSBISLの金融モラルにかかわる不祥事の重大性を考えれば、監督官庁としてSBIが新生銀行の経営権を握ることに疑問を呈するのが筋ではないのかと思うからです。
その観点から今回の件を見ると、金融庁の対応に不信感を感じる点も多々あるのです。
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