えっ、水切り石を運ぶの? 土屋鞄の“とんがったカバン”が面白い:週末に「へえ」な話(1/4 ページ)
土屋鞄製造所がユニークなカバンをつくっている。大玉のスイカを入れたり、雪だるまを持ち運ぶことができたり、水切り用の石を詰めることができたり。実物が世に出るたびに、ネット上で話題になっているが、それにしても、なぜ“とんがったカバン”をつくり続けるのだろうか。担当者に聞いたところ……。
一番大切なことは、ターゲットを絞ること――。マーケティングの本をパラパラとめくっていると、このような文言が「必ず」といっていいほど出てくる。そのたびに、商品開発の担当者は「Z世代に向けて……」とか「40代男性の特徴は……」てなことを考えながら、新しいモノを生み出そうとしているわけだが、なぜターゲットは絞り込んだほうがよいのだろうか。
「そうそう。前から思っていたんだよね。たくさんの人に売れたほうがよいので、客層を絞るよりも広げたほうがよいよ」と指摘したくなったかもしれないが、狙っている人たち以外は手が出ないくらい“とんがった商品”にはメリットが2つあるのだ。1つは市場が狭くなるので、そのぶん競合が減ること。もう1つは、経営資源が限られているなかで、ターゲットにササりやすい商品を開発しやすくなること。
結果、とんがった商品が世に出てくるわけだが、昨年「こんな商品誰が買うの? でも、ちょっと気になる」と感じたカバンが出てきた。ビジネスバッグや財布などを手掛けている土屋鞄製造所(東京都足立区)の「運ぶを楽しむ」シリーズだ。
その第一弾として、スイカを持ち運ぶための専用バッグが登場した。約60個のパーツを組み合わせていて、大きさは縦21×横25×最大マチ25(いずれもセンチメートル)で、Lから2Lサイズのスイカが収まるように設計している。素材はイタリアの高級牛革を使用していて、価格は11万円。
「ちょ、ちょっと待った! いろいろ言いたいことがあるけれど、そもそもスイカを買ったときに持ち運びができる袋(またはヒモ)に入れてくれるでしょ。んなわけで、スイカ専用のカバンなんていらないし、11万円って高すぎる」と思われたかもしれないが、2021年の発売にちなんで限定21個を販売したところ、わずか2週間で完売したのだ。
このバッグをよーく見ると、スイカの頭の部分がチラリと見えるように設計していて、口元の直径を少し小さくすることで安定性を向上させ、落ちないように口元はボタンを8カ所付けている。また、持ち手は牛革を巻くことで、「重いスイカでも片手で持ちやすいにようにした」(担当者)という。
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