2022年、鉄道はどうなる? 5年半ぶりの「新幹線開業イヤー」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/9 ページ)
鉄道需要は回復傾向にある。緊急事態宣言終了後の鉄道の混雑は、筆者も体感しているが、変異型オミクロン株は予断を許さない状況だ。それでも鉄道業界の決定事項として、「西九州新幹線開業」「JR只見線全線再開」「新型車両導入」「減便ダイヤ改正」がある。これらの行方と、鉄道の国内需要について考えてみたい。
22年3月ダイヤ改正までは「引き返せる減便」が目立つ
春の風物詩、JRグループの全国ダイヤ改正は3月12日に実施される。これに合わせて大手私鉄、地方私鉄も改正されるから、全国規模で鉄道が変わる。
12月17日が公式発表日で、記者クラブ向けには事前にレクチャーが行われるから、少しずつ情報が明らかになる。ざっと俯瞰(ふかん)したところ、キーワードは「車両の新旧交代」と「減便」といえそうだ。
「車両の新旧交代」は燃費とサービス向上になる。企画設計から導入まで最低でも数年かかる。古い車両が経年劣化によって交代が必要になるから計画的に実施される。緊急事態宣言とは関係ない。
注視すべきは減便のほうだ。旅行需要の低下によって、休日や日中の減便が多い。そればかりか、少子化傾向とテレワークの普及によって、通勤通学時間帯の減便、終列車の繰り上げが目立つ。
20年に顕著になった鉄道需要の急落を受けて、21年3月のダイヤ改正は大幅な減便となった。21年も今ごろ回復傾向になってきたけれど、移動・旅行需要の完全回復には懐疑的で、ほとんどの鉄道事業者で減便傾向が続く。前向きな内容も背景は深刻だ。
特急列車の停車駅増加は乗客減を補って集客するためだし、「指定席増加、着席サービスの向上」も、裏を返せば自由席の利用者が減って「割安な自由席ではなく指定席に乗ってほしい」という気持ちの表れだ。
22年の移動需要は2つの見方がある。1つは「このまま回復傾向が続く」。もう1つは「オミクロン株によって再び緊急事態宣言が発令されるかも」だ。減便傾向は最悪の事態を想定したといえる。
しかし、そう悲観することでもないな、と筆者は考えている。減便したとしても、車両と人員が確保できていれば増便できるからだ。「車両の増備をやめます」となったら終りの始まりだ。しかし、今のところ車両の新造、増備計画は維持されている。
このまま需要減が続けば、「古い車両を引退させます。代わりの車両はありません」となり、増便できない。需要回復の兆しが見えても、車両の増備には時間がかかる。見かたを変えれば、まだ増便できるうちに需要回復の手立てを考えたい。
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