2022年の外食産業はどうなる? 「オンザライス系」と「大衆食堂」に注目すべき“合理的”な理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
2021年の外食産業はコロナに翻弄され続けた。22年にはどのような業態が流行するのだろうか。筆者が「オンザライス系」と「大衆食堂」に注目する理由とは?
深刻化する人手不足
緊急事態とまん防が解除された21年10月以降に深刻化しているのが、飲食店の人手不足だ。海外からの渡航制限で外国人アルバイトを雇いにくくなっているだけでなく、日本人の応募も少なくなっている。やはり、感染が拡大すれば真っ先に営業の自粛を迫られるので、飲食店は安心して働ける場所でないという意識が強く働いているようだ。
そのため、いまだにフルタイムで営業できず、早めに閉めざるを得ないお店も少なくない。
国や自治体の自粛要請を無視して、フルタイムでお酒を提供し続けたお店に限って、アルバイトも足りていて、顧客の入りも良い傾向がある。皮肉な現実だ。
しかし、このような人手が足りない状況だからこそ、新しい技術で乗り切ろうとする動きが出てくる。一つの例として、エー・ピーホールディングスの主力業態「塚田農場」のDXへの取り組みを紹介したい。
従来の塚田農場は、ホールスタッフの数が多かった。特に、浴衣を着た女性スタッフによる華やかな接客が売りだった。料理には宮崎県、鹿児島県、北海道で生産された地鶏を使用し、生産者の想いやメニューのこだわりを、丁寧な接客により伝えてきた。
ところが、コロナ禍により非接触が求められ、メニューブックの使い回しさえ忌避されるようになった。独特な塚田農場の生販直結モデルを、人力と紙で伝え切れていたのかとの疑念もあった。そこで、トレタ(東京都品川区)の店内モバイルオーダーシステム「トレタO/X(トレタオーエックス)」の導入を決定。20年10月より、ゼロから両社でデジタルメニューの開発を始め、21年11月より店舗に実装した。従来よりトレタはエー・ピーの予約傾向などの緻密な分析を行っており、気脈を通じていた。
完成したモバイルオーダーは、「おいしい理由」というストーリーを顧客に伝える設計になっている。料理のシズル感が伝わる解像度の高い写真を使用。1つ1つの料理の開発の背景や、素材に込められた生産者のこだわりを簡潔に動画で説明している。フードとドリンクの最適なペアリングの提案なども、参考になる。
スマートフォンから注文ができるため、顧客はホールスタッフに「すみません」といちいち声をかける必要がなく、ストレス軽減に貢献。ホールスタッフの仕事も減り、従来の半分ほどの人数でお店を回せている。
また、「トレタO/X」の決済機能により、電子マネー、クレジットカードを使った会計が席に座ったままできるようになっている。
公式サイトからのオンライン予約も可能で、グルメサイト依存の集客からの脱却を目指す。さらに、予約を取る電話番をAI化し、24時間稼働で予約漏れを防いでいる。
塚田農場は約80店を全国に展開しているが、これだけの店舗数があるチェーンに、予約から来店後のオーダー、会計までを一気通貫したDXを構築した事例は、日本初だ。
導入効果としては、2週間経過後の公式サイト経由の予約比率が導入前より154%に向上。顧客単価も19年に比べて10%以上アップした。
このほかにもさまざまな事例がある。くら寿司は、来店から注文、決済まで非接触が可能なモバイルオーダーシステムを導入している。「スシロー」を展開するあきんどスシローでは、予約した時間に、入口に設置されたロッカーで商品を受け取れる非接触性が高いテークアウトシステムを導入する店舗を増やしている。
物語コーポレション「焼肉きんぐ」、ワタミ「焼肉の和民」などは配膳ロボットの活用を進めている。このように、外食のIT化やロボット化の提案が行われた。
22年は、外食産業の慢性的な人手不足解消と、減少した売り上げでも利益を出せる体質改善を目指し、あらゆる場面でDXの進化が見られるだろう。
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