「お金の使い方」を知っていますか? 教育事業参入のマネックス松本社長に聞く(3/4 ページ)
マネックスグループは2021年11月26日に、STEAM教育に取り組むスタートアップ「ヴィリング」を買収した。これは、マネックスが教育事業に新規参入するということを意味する。その背景には何があるのか。松本大社長に聞いた。
——生涯バランスシートの考え方の中には、「間違ったお金の使い方をしない」という内容もあります。一方で、お金の増やし方については玉石混交ながら情報があふれていますが、お金の使い方についてはほとんど情報がありません。
日本ではお金の使い方について、学校でも家庭でもほとんど話しません。でもこれには先生なんていらないんです。小学生の高学年なら、デパートに連れて行って1万円渡して、好きなものを買っていいよと言えば、わーと興奮していろんなところに行って本でも文房具でも、ぴったり1万円の買い物をすると思います。合理的で理想的な買い物を。そのうち1つはお母さんへのプレゼント、150円のボールペンもあるかもしれません。
でも同じ子どもに100万円渡して買ってこいといったら、どうしようもない高い置物を買ってきたりとか全然ダメなお金の使い方をするわけです。これは分かりやすい例で、練習しないとちゃんとお金は使えません。
小学生だったら、100万円あったら何に使うか、子どもたち同士のグループワークで考えて発表し合う。その中で、ああ、そういう使い方があるんだ、という気づきが得られるでしょう。中には10万円寄付するなんて子も出てくるかもしれません。
中学生なら1000万円とか。すると起業するなんてヤツが出てきたりする。高校生なら1億円でもいい。こういうふうにすることで、自分たちで学べるんです。そうした中で、投資があるということも、中高生だと思いつく人もいると思う。
こうやって、お金の使い方の知力がつく。そういう人が、例えば政府に行って100兆円の使い方を考えたほうがいい。お金の使い方を考えていない人が、いきなり1兆とか100兆の使い方を任されてしまうと、つまらない使い方をしちゃったりするんです。
お金の使い方はすごく重要なんですけど、教材もサービスもいらなくて、自習させればいいと思っています。
——日本の高齢者の中には、お金を貯めたものの、それを使えないまま亡くなるという人がたくさんいると聞きます。若いうちに“使い方”を学ばずに大人になってしまった人はどうしたらいいのでしょうか。
それは日本だけではないんです。20年くらい前の米国での研究で、収入と幸福感の調査がありました。その中で、当時の10万ドルまでは収入が増えると幸福感が増える。ところが、10万ドルとか12万ドルを超えると、幸福度は上がらなくなるんです。なぜかというと、使えなくなるから。
10万ドルくらいまでは使えるんです。もっといいところに住もうとか、いいものを食べようとか、ちょっと旅行に行こうとか。使えるから幸福感が増えるけれど、あるところを超えると使えなくなって幸福感を感じられない。
人は幸せを、お金を得たときに感じるんじゃなくて、使ったときに感じるんですよ。だから、使い方をうまくするのは幸せになるためにすごく大切なこと。そういうことをもっとみんな知った方がよくて、その上でお金を遺さずにどう使ったら良いか考えようと。
日本では、もうけ方とか投資法とか、お金の増やし方、稼ぎ方にばかりエネルギーを使っていますが、それは幸福になるポイントではないんです。ここはビジネスにはあまりならない気がするけれども、このことはずっと言っていきたい。
こうした人はマネックスのお客さまでも多いと思う。お客さまのために、使い方を考える機会を提供することも考えていけたらと思います。
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