日大は変われるのか いまだ続く「縁故採用」の功罪:リファラルとコネでも大違い(4/4 ページ)
さまざまな不祥事で注目を浴びた日本大学。その背景には閉鎖的な組織風土があったと考えられるが、新たな職員採用でも「縁故採用」が続いているようだ。人事や人材に詳しい筆者の視点から、縁故採用の功罪や、昨今注目の手法などを解説する。
それによると1次選考で書類選考があり、合格すると2次から4次選考まで適性検査や面接、グループワークなどをクリアしていくフローになっています。しっかりと選考が行われることから、俗にいうコネ採用ではなくリファラルに近い形式だといえます。
ただし気になるのは、応募資格として関係者の推薦が必須になっていることです。その条件は、採用間口を著しく狭くします。大学職員は人気が高く、応募者確保に困らないのかもしれませんが、冒頭で示した通り、今後の採用市場はシビアな環境になる可能性があります。これまで通り採用できる状態が維持できるとは限りません。一般公募せず、極端に間口を狭めたままの状態を続ければ、今後の状況は不利になっていくはずです。
そしてもう一つ気になることがあります。関係者の推薦が必須ということは、その関係者が応募資格を付与する特権を持つことになります。もし関係者同士が結託し、自らを利する者だけに応募資格を与えるよう取り計らえば、入職者は特別な関係性でつながった人材ばかりになります。そのような採用を繰り返せば、組織は必然的に不健全な支配関係に束縛され、異様なまでに同質性の高い体質になっていくことは容易に想像できます。
そこに悪意を持った支配者が君臨してしまうと、組織は一気に腐敗します。前理事長を含むさまざまな組織的不祥事が明らかになった日本大学において、それが現実になってしまった可能性は否定できません。
時事通信の記事によると、前理事長との決別を宣言した日本大学の関係者は採用要項の見直しにも着手すると話しています。組織体質の改善と今後の採用市場への対応を考えると、賢明な判断だと思います。
どんな採用手法にもメリットとデメリットがあります。縁故採用もしかりです。うまく運用すればさまざまなメリットを享受できる手法ですが、透明性が低く第三者の眼から遮断された状態で運用されれば、悪意に利用されてしまう可能性は高くなります。決して、縁故採用自体が組織を腐らせるわけではありません。誤った運用と、縁故採用を悪用する者こそが諸悪の根源なのです。
著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ3万5000人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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