このままでは“一億総非正規”待遇に!? 郵政は「正社員の休みを減らし格差解消」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
「非正規社員の賃金が上がる」と期待が寄せられた同一労働同一賃金。しかし日本郵政グループは、正社員と非正規社員の格差是正を求める訴訟の結果、「正社員の休みを減らし格差を解消する」という提案を出した。こうした事例から、日本企業にはびこる“経営者問題”の根深さが見えてくる。
つい2カ月前の11月12日には、21年度1年間の業績見通しについて、「最終的な利益を4800億円とし、従来の予想から40%余り上方修正した」と、発表していたのに。
その利益とは、どこから出たものなのか?
「国際的な物流事業の収益が、コンテナ船不足が続く中で取り扱い量が増え、単価も上昇して大きく改善したことや、ゆうちょ銀行の運用益が、世界的な株高などを背景に、投資先ファンドからの分配金が増えるなどして大きく伸びたことなどによるもの」としています(出典記事=NHK)。
そこに、「社員の努力」はなかったのか?
私は経営とは「人の可能性にかけること」だと考えています。しかし、悲しいかな「人=コスト」と考え、目先のカネ=利益に目を奪われている経営者が、あとを立ちません。
特に、超高齢社会の日本で、直接「私」たちと接する機会の多い郵政グループの社員の能力を高め、スキル向上を目指すことは生産性の向上につながる「人的資本への投資」です。
なのに、賃金は減らすわ、休みは減らすわ、労働環境を改悪し続けている。
郵政グループの労働組合のWebサイトを見ると、「労働環境は改善」しているようにも見えます。
しかし、今回の方針、すなわち「格差をなくすために、正社員の休みを減らします!」という提案からは、「正社員のコストを下げたいよね?」という本音が透けて見える。
契約から正社員に転換するアソシエイト社員を増やしている背後にも、何がなんでも「正社員のコスト削減ありき」なのでは? と思えてなりません。
日本の生産性の低さの根源には、このような「人の能力をばかにしている経営」の問題があります。
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