昇格・降格は、何を基準に決めるべきか 制度設計と運用を解説:昇格、降格人事を考える(1/2 ページ)
これまで2回にわたって、昇格・降格の基本的な考え方と、昇格・降格の前提にある人事等級制度について概要を解説してきました。今回から昇格・降格の制度設計と運用について述べていきます。
これまで2回にわたって、昇格・降格の基本的な考え方と、昇格・降格の前提にある人事等級制度について概要を解説してきました。
今回から昇格・降格の制度設計と運用について述べていきます。
1.昇格は「卒業方式」か「入学方式」
まず、昇格を判定する際の基本パターンを解説しましょう。昇格には「卒業方式」と「入学方式」があります。
卒業方式とは「現在の人事等級の要件をクリアすれば昇格する」というやり方です。例えば、人事等級4級の人が、4級の要件を完全にクリアしていれば5級に昇格させるということです。これは「4級の要件をクリアしていれば、5級の仕事もできるだろう」という期待値に基づいた昇格です。
一方、入学方式とは、上位等級の仕事ができるかどうかを判定した上で昇格を決めるという方法です。
卒業方式のメリットは、基準がすっきりしている点にあります。4級の人は、当然4級の仕事をしているのですから、それを完全にこなしているかどうかを判定するのは、比較的容易です。
デメリットは「4級の仕事を完璧にこなしていても、5級の仕事ができるかどうか、本当には分からない」ということです。昇格させたものの、期待はずれに終わる可能性があるわけです。特に降格がない場合、その等級にいる人が果たすべき役割を果たせない状態が、ずっと続いてしまいます。
入学方式のメリットは、昇格させても問題ないという確信が持てる点にあります。
デメリットは、上位等級の仕事をこなせるかどうかは現場次第という点です。職場の状況、管理職のマネジメントに任されるわけです。上位等級の仕事をこなす実力があるにもかかわらず、諸般の事情(仕事を担当させようにも他の人がやっていて、担当させることができない、など)でその仕事をやっていなければ、昇格できません。
そう考えると
- (1)卒業方式を最低要件として、入学方式を併用する
- (2)昇格が視野に入った社員には上位等級の仕事を割り当てるよう管理職に指示する
――という運用をするのが良いと思われます。
2.人事評価と昇格
昇格・降格基準として重要なのは人事評価です。人事等級が求める要件(能力、担うべき役割の大きさなど)を、対象者が満たしているか否かを判定するわけですから、人事評価抜きに実施できません。
(1)人事評価基準には何があるか
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