日本企業に使いこなせるのか 過度な「優秀な人材」獲得競争に覚える違和感の正体:組織文化を壊すリスクも?(2/5 ページ)
昨今、ビジネス環境の変化に伴い、「優秀な人材」の獲得競争が激化している。一方で、いわゆる優秀な人材を獲得するのがゴールではない点に留意が必要だ。ケースによっては組織文化を壊してしまうリスクもある。
多くの日本企業は、歳を重ねるごとに賃金が上がっていく年功制の人事制度をとっています。また、全社員の賃金が毎年上がっていく「ベースアップ(賃上げ)」を前提とした人事制度で成り立っており、新入社員から定年まで勤め続ける終身雇用を前提にした制度を導入してきました。
一方で、日本の経済はバブル崩壊後ずっと低成長を続けており、「企業が売り上げを伸ばし、社員の賃金も上がる」という高度成長期に適合した年功制モデルの人事制度は、人件費比率の高止まりを引き起こしています。このことは将来の事業継続への大きな重しとなっており、経営者の頭を悩ませています。少子高齢化も影響して40代以上の賃金が総人件費の50%を超える企業も多くあります。
事業環境や仕事のスタイルも大きく変化する中、これまで事業に貢献してきた40代以上のベテラン社員であっても、これまでのスタイルだと成功を収めるのが難しくなっています。こうした背景から、人材の入れ替えを行い、新たな時代の流れや働き方にマッチした「優秀な人材」に特化した採用方針を打ち出す企業が多くなってきているのです。
「優秀な人材」のために制度を変更する企業が続々
採用や人事制度の面で、大手企業を中心にさまざまな制度変更がなされています。
GMOインターネットグループは、新卒採用を「優秀な高度人材」に絞る方針に決めました。新卒採用の年収を大幅に引き上げ、採用人数の枠を設けない「優秀な高度人材のみ」を採用していく方針に大幅転換しています。
昨今話題にのぼっている「ジョブ型雇用」に関して、日立製作所は全社員をジョブ型雇用制度への転換を表明しています。既存社員も含めた全社員を対象に、職務内容に合致した人材を適所適材に配置する方針です。
これまでは、未経験の新卒社員を採用し、入社後に経験を積ませて活躍できる人材に育成していくのが主流でしたが、それでは事業変化のスピードに育成が追い付かず、外部からの「優秀な人材」の採用や、「優秀な人材が集まる」制度設計などにシフトしていきつつありるのです。
人材マーケットでも「優秀人材」というキーワードが並びます。各社は自社の人材を超える高いレベルの能力を求めており、多くの人材会社から「優秀な人材がいます」という紹介がひっきりなしに来ます。人材マーケットは「優秀な人材」と「それ以外」に分断されているような錯覚すら覚えるほどです。
しかし、ここで一つの疑問が出てきます。果たして「優秀な人材」を獲得した後、全ての日本企業はその人材が活躍する場を提供できるのでしょうか。
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