日本企業に使いこなせるのか 過度な「優秀な人材」獲得競争に覚える違和感の正体:組織文化を壊すリスクも?(3/5 ページ)
昨今、ビジネス環境の変化に伴い、「優秀な人材」の獲得競争が激化している。一方で、いわゆる優秀な人材を獲得するのがゴールではない点に留意が必要だ。ケースによっては組織文化を壊してしまうリスクもある。
必要なのは、本当に「優秀な人材」なのか?
先日、ある企業の経営者と採用担当者を交え、新卒採用について議論しました。これまで採用ができなかった一流大学の内定者が出たと採用担当者が胸を張って話すと、経営者から出た言葉は、「本当にその内定者はうちの会社に入社するのだろうか? そんな優秀な人材はうちの会社にマッチしないですぐに辞めてしまうのではないか」というものでした。採用担当者は落胆したような顔をして、回答に困っていました。
実は、このような話は多くの会社で起こっています。そもそも、本当に全ての会社で「優秀な人材」が必要なのでしょうか?
筆者は多くの企業から採用の相談を受けていますが、ほとんど全ての企業で「優秀な人材が欲しい」という声を聞きます。しかし、いざ「優秀」といわれる採用候補者が選考に進むと、「本当にうちの会社に合うのだろうか」という社内の声が聞こえてくることもしばしばあります。
優秀な人材より「普通」な人材を求める経営者も
また、ある企業で「自社の求める人物像」について議論していたとき、経営者からこんな言葉が出てきました。
「うちの会社では人材が大きく不足しているが、入社してくれる人は”普通の人”でいい」
「優秀な人材が入ってくると 組織が大きく混乱してしまうことにつながりかねない」
その企業は歴史があり、自動車販売業を営んでいます。社員の6割がメンテナンスを行う整備士で、人材のポートフォリオを調べると社員の半分が「エキスパート志向」という結果が出てきました、エキスパート志向とは、「与えられた仕事や役割を着実にこなす」思考で仕事をしているパーソナルタイプです。
前述の経営者は、自社の社員の中に突然優秀な人材が入ってきても、社内に馴染まず成功しないと考えていたようです。「実際にこれまで何人もの”優秀な人材”といわれる人を採用してきたけれど、ほとんど活躍できていない」とも話してくれました。
中小企業は、少ない社員数で事業を回しています。そのため、社員一人一人の役割や責任が必然的に大きくなりがちです。そして、チームでスクラムを組み、協調して仕事を行いパフォーマンスを出していく企業がほとんどです。個の優秀さよりも、チームの中で和を大切にする人材が重宝される傾向があるということです。
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