ジョブ型雇用では、どんな人材育成の仕組みが必要なのか?:いまさら聞けないジョブ型雇用(3/3 ページ)
ジョブ型雇用では、一人一人がジョブに適応する専門家として迎えられます。そのため、人材育成の内容は、専門性に応じた個別ニーズに応じたものが求められます。では、どのような仕組みが必要なのでしょうか?
能力開発は日々のジョブの中で実行することが最も効果的です。コーン・フェリーは「70:20:10の法則」を提唱しています。人材育成の7割がジョブによるもの、2割が優れた人物からの薫陶、1割が研修やアセスメント、書籍などによるものです。ジョブの現場における人材育成を、情報技術の力も活用しつつ浸透していくことがジョブ型雇用における人材育成では重要となってきます。
まとめ
前編・中編・後編で、ジョブ型雇用下の人材育成で必要なことをお話してきました。
まず、ジョブに人を結び付けるジョブ型雇用では、コンピテンシーを人材マネジメントの赤い糸として位置付け、ジョブに必要な人材の要件をコンピテンシーによって定義し、これを人材育成に活用することが有効です。
次に、ジョブ型雇用ではリーダーが状況に応じてリーダーシップを発揮するよう育成をすることが重要になります。そのためには気付きによるフィードバックを得る機会によりリーダーの行動変容を多面診断やコーチングの機会を生かして促すことが効果的です。
そして、ジョブ型雇用では、個々の従業員のニーズに応じた多様なラーニング・ジャーニーを構築し、ジョブの現場における人材育成を行う仕組みを整えていくことが重要となります。その過程で情報技術を活用したプラットフォームを利用すれば、より効果的な人材育成が可能になるでしょう。
著者紹介:森 健(もり つよし)シニアコンサルタント
大手生命保険会社を経て戦略コンサルティングファームに入り、様々な経営改革プロジェクトに従事。その経験から人材育成が経営の要諦との考えに至り、人事コンサルティング業界に転じ人材育成の企画・実行に多数携わる。その後大手企業の人材育成を企画する部長職等を経てコーン・フェリーに入社。現職では経営課題解決に資する人材育成の実行に焦点を置く。 マネジメント領域での19年の講師経験を活かし、経営者から若手有望社員まで第一線のビジネスパーソンに対しトレーニング、アセスメント、コーチング等の支援を幅広く提供。米国インディアナ大学ブルーミントン校MBA(経営学修士)修了。東京大学文学部卒業。
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