鉄道の“座席”から生まれた! 「モケット」を使ったグッズが2倍ペースで売れている:週末に「へえ」な話(2/4 ページ)
鉄道車両のシートを使ってグッズを販売したところ、売れに売れている。商品を手掛けたのは、老舗織物メーカーの「日本シール」。どんなアイテムが人気を集めているのかというと……。
“座席一本足打法”からの脱却
話はちょっと変わるが、ここで日本シールの業績を紹介する。新型コロナの感染拡大を受けて、鉄道やバスなどの利用客が激減したことはご存じのとおり。取引先の多くが新車両の生産を停止したので、同社の売り上げは例年の半分以下に落ち込んだのだ。
モケット事業の年間売上高は6億円で、同社全体の3割ほどを占めている。「このままではいけない。なんとかしなければ」ということで、これまでの“座席一本足打法”ではなく、素材を使ったグッズ販売に乗り出すことにしたのだ。
銚子電鉄のシートを使ったクッションが売れたことで、「他の取引先とのコラボもうまくいくのでは?」と考え、商品ラインアップを増やすことに。声をかけて回ったところ、「それ、いいね!」「一緒にやりましょー」と好反応を示すところが多く、現時点で7社が賛同。各社で使われているモケットを使って、財布、トートバッグ、キーケース、ブックカバーなど販売することになったのだ。
冒頭で、日本シールのことを「老舗織物メーカー」と紹介したが、今年で創業100周年を迎える。長い歴史の中で、モケットを使ったアイテムは存在しない。初めての試みということもあって、事業は手探りのまま進んでいく。シートの縫製を担う協力工場に依頼したところ、「ペンケース? カバン? そんなモノつくったことがないよ」といった感じで、断られたことも。
しかし、ここで引き下がらなかったのが、車両グループの竹野林太郎さんである。前職の商社でアパレルを担当していたこともあって、縫製の基本的な知識がある。「ペンケースはこのようにすれば、うまくつくれますよ」などと“技術指導”をして、商品化が実現したのだ。
想定以上の人気が出たことについて、竹野さんはどのように見ているのだろうか。コロナの感染が広がって、鉄道関連のイベントが軒並み中止に。グッズを買いたいのに買えないといった状態が続いていた中で、座席を使ったアイテムが登場した。「ファンの人たちから『待ってました』『こういう商品がほしかったんですよ』といった声がありました。鉄道会社によってモケットの手触りや柄が違うので、こうした点もファンの心をつかんだのではないでしょうか」
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