鉄道の“座席”から生まれた! 「モケット」を使ったグッズが2倍ペースで売れている:週末に「へえ」な話(3/4 ページ)
鉄道車両のシートを使ってグッズを販売したところ、売れに売れている。商品を手掛けたのは、老舗織物メーカーの「日本シール」。どんなアイテムが人気を集めているのかというと……。
素材は再現したのか
ここで、「へえ」と感じたことを紹介する。先ほど「人気アイテムは国鉄ブルー」と紹介したが、これは団子っ鼻のデザインで親しまれた初代新幹線で使われたモノである(在来線の車両も含む)。前回の東京オリンピック開催に合わせて1964年にデビューして、2008年に引退した。44年に及ぶ歴史の幕を下ろしてから、14年の月日が経つ。にもかかわらず、当時のモケットを使っているのはどういうことなのか。
「そりゃあ、再現したんでしょ。当時の資料を探すのが大変だったのでは?」と思われたかもしれないが、違う。日本シールの倉庫に保管していて、その在庫を使って、ペンケースなどに生まれ変わっているのだ。どういうことかというと、鉄道の利用客がシートを傷つけたり、破いたり、何らかの事情でモケットを張り替えなければいけないことがある。鉄道会社から「5メートルぶんだけ買います」といった連絡があったにもかかわらず、「いや〜、すみません。いまからつくりますので、1カ月ほど待ってくれますか?」といった“のんびり対応”が許されない世界なのだ。
鉄道会社側からすると、シートを張り替えることができなことを理由に、「当分、列車を走らせることができません」といった対応はできない(基本は)。会社の通勤に使う人もいるし、通学に利用する学生もいるし、遊びに行くのに乗る人もいる。鉄道事業は公共性が高いこともあって、織物メーカーは常に在庫を保管しておかなければいけないのだ。
国鉄時代(1987年に分割民営化)に使われていた新幹線や都市部の在来線を走っていた車両は、いま地方や第三セクターなどで“活躍”している。ということは、その車両で国鉄ブルーのモケットが使われているのだ。
この話を聞いたとき「新しい素材で、今風のデザインにしたほうがよいのでは?」と思ったが、地方で走行する車両の多くは短い。例えば、1〜2両のために、新しいモノに張り替えるとなるとコストが高くつくので、「じゃ、これまで通りのモノで」となる。こうした背景があるので、織物メーカーは当時のモノを少しずつつくって、少しずつ保管しておかなければいけないのだ。
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