ソニーも参入を発表した群雄割拠のEV市場 勝つのは古豪か、新参者か、よそ者か:「テスラ一強」も今のうち?(2/4 ページ)
CESでEV市場への本格参入を発表したソニー。同市場には「古豪」の自動車メーカー、「新参者」のEV専業メーカー、そして「よそ者」とも呼べるIT企業が入り乱れ、昨今の「テスラ一強」もそう長くは続かない可能性がある。果たして勝つのはどこなのか
特にその先頭を走る米テスラの快進撃には、目を見張るものがあります。09年に最初の量産型EVモデルを発売した同社は、納期の不安定さもあり需給バランスに安定さを欠く状況が続いたものの、16年発売の「Model 3」がEVとしてのメカニズムだけでなく高級感あふれるインテリアと合わせて、「これまでのクルマとは違う移動体」との評価を受け爆発的なヒットとなりました。
従来、クルマはハードウェアありきで開発されてきました。一方、常時インターネットに接続することで車の制御をソフトウェアで行い、不具合や機能改良・追加をソフトのアップデートでこなす点が、EV車の最大の特徴です。これがテスラのEVをもって「これまでのクルアとは違う移動体」と言わしめ、衝撃的に受け入れられた理由なのです。
17年時点で10万台程度だったテスラの生産台数は21年に93万台へと達し、何より特筆すべきは20年夏には時価総額でトヨタを超え、さらに21年10月時点でその額1兆ドルを超えるという急成長を遂げている点です。時価総額がここまで急伸した要因は、Model 3の好調もありますが、何よりカーボンニュートラル問題の盛り上がりとともに投資家のESG投資選好の傾向が強くなり、EV主力銘柄としてテスラが積極的に買われた結果に相違ありません。かたくなにハイブリッド主力戦略を堅持してきたトヨタが、21年末にEVシフトとも受け取れる方針を明らかにした背景には、このような事情もあると推察されます。
しかしトヨタがGMやダイムラーのように、期限を定めて100%のEV化移行を宣言しないのには別の事情もあります。
一つは、トヨタが先導してきたハイブリッド車を簡単には捨てられない、というプライドにも近い事情です。もう一つが、日本特有とも言える自動車業界の垂直分業による業界ピラミッドの問題です。EVの部品点数は従来の自動車の約半分と言われ、国内販売自動台数の9割がEVになれば下請け部品関連雇用の12%が職を失うとの調査もあり、これまでも豊田章男社長はこの下請け雇用の擁護を理由に100%のEV化を否定してきました。
「テスラ一強」はそう長くないかもしれない
もちろん、EVの先頭を走るテスラにも弱みはあります。例えば、生産ラインです。
現在ようやく年間100万台規模に達した生産現場は、22年に完成の米独の新工場が稼働すれば年200万台規模までの増産が見込まれます。しかし既存の自動車メーカーたちが本気でEV生産に乗り出せば、数字の上ではあっと言う間の首位陥落は確実であり、主導権を簡単に明け渡すことになるかもしれません。トヨタら日本勢の垂直分業体制は先に述べたアキレス腱的存在でありながら、一方では早期に増産ラインを構築できる強みでもあり、製造面からはテスラの天下が必ずしも長く続くとは言えないのです。
テスラの成功に刺激されたEV専業メーカーも、雨後の筍のごとく登場しています。特に中国では昨年来、新興企業が実用車としてのEVを開発・販売する動きが活発化。「移動」に的を絞った1台50〜200万円クラスの格安EVが登場し、これが大ヒットして中国のEV市場が急激に拡大しています。機能は限定的ながら、今は主に地方住民の移動手段として人気を集めているといいます。中国においては高級車のテスラ、中級車のトヨタ、VW、GM、そして低価格の新興EV企業という一応のすみ分けはできてはいるものの、今後商用車などのマーケットも巻き込み市場が拡大する中で、どのような展開になるのか予断を許しません。
非自動車メーカーも続々参戦
EVを巡るもう一つの大きな動きが、大手ITによるEV事業への本格参入です。
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