10月に入ってから内々定を“取り消し” 炎上したスタートアップは、どうすれば良かった?:弁護士が解説(1/2 ページ)
2021年10月、スタートアップ企業であるBluAgeが、21人の学生に対して内々定を取り消し、波紋を広げました。「内定」「内々定」の法的位置付けと企業に生じる義務、本件が騒動となった要因について、向井蘭弁護士に聞きました。
本記事は、BUSINESS LAWYERS「BluAgeの内々定取り消し騒動、労働問題対応の要点を実務経験から弁護士が解説」(向井蘭弁護士/2021年12月1日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
2021年11月4日、部屋探しアプリを運営するスタートアップ企業である株式会社BluAgeは、22年卒の新卒採用において21人の内々定者に対して内々定を取り消したことを公表、謝罪しました。SNSでは内々定を取り消されたと訴える投稿も見られ、大きな反響が寄せられています。
本稿では、使用者側の労働事件を数多く取り扱い、代理人として内定取り消しを行った経験を持つ杜若経営法律事務所の向井蘭弁護士に、「内定」「内々定」の法的位置付けと企業に生じる義務、本件が騒動となった要因などについて聞きました。
1.騒動の原因は、通常と異なる選考過程や内々定取り消し理由の説明不足
──本件の概要と特筆すべきポイントについて教えてください。
BluAge社(以下「B社」)は、21年4月から9月に47人へ内々定を出したうえで、9月に最終の採用選考プロセスを実施。10月2日に26人の採用を内定し、残りの21人に対して内々定を取り消したとのことです。
内々定を取り消されたとする内々定者によるSNSの投稿では、6月に内々定を受けたのち、内定解禁日である10月1日の直前に、座談会・グループディスカッションのため会社に呼ばれるとともに、そこで面接が行われ、10月2日に座談会の内容を理由に内々定を取り消されたと記載しています。また内々定の取り消しにあたり、明確な理由はなかったといいます。
本事案について、法的には、内々定と内定の判断基準及び内々定取り消しの法的性格が問題となります。
──採用活動における内定・内々定の違いと、企業に生じる義務や有効性について伺えますか。
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