ENEOSが「モス」や「サイゼ」を自動配送 1万3000カ所の給油所活用で目指す姿とは:自動走行ロボットの輸送インフラを構築(4/4 ページ)
ENEOSホールディングス、ZMP、エニキャリは2月1日、自動宅配ロボットを活用したデリバリーの実証実験を、東京都中央区佃・月島・勝どきエリアで開始した。
課題は法規制とビジネス面
「自動宅配ロボットの法制度は、これから整備されていくような状況。公道を縦横無尽に走り回るまでにはかなりのハードルがある。そのため、実証実験を通して実績を積み上げていき、規制改革を訴えていきたい。法規制が緩和されるまでは、走行可能なエリアやサービスにフォーカスして進めていく」(片山氏)。
加えて、ZMPロボライフ事業部の池田慈氏は「法規制がたとえ緩和できて自動宅配ロボットが公道を走れるようになったとしても、その光景を住民が受け入れられるのかという課題がある。そうした社会受容性を高めていく取り組みは、ロボットメーカーとしてもやっていきたい」と話した。
ビジネス面について片山氏は、「ロボットが一般的な普及価格になっていないので、稼働率を高めながら、さまざまなサービスを1台で賄えるようなサービス設計を見つけていく必要がある。実証実験では配送料のみで運営するが、実際にプラットフォームビジネスとして行っていく段階では、店舗側から手数料をいただくと思う」と話す。
また、中山間地域に住む高齢者のなかには、近くに店舗が存在せず、交通手段もないことから買い物難民になっている人が数多く存在する。宅配サービスはそうした課題を解決する一助になることも期待されている。
片山氏は「買い物難民を救う面では、本事業も有意義なサービスになると思う。しかし、住人が少ないので稼働率は非常に少ないことが予測される。今回のモデルをそのまま適用しても、ビジネスモデルをうまく構築できないのではないか。例えば、高齢者の見守り機能といった別の付加価値をつけて展開する必要がある」と言及した。
同実証実験は2月28日まで実施する予定。実証期間中に検証した稼働率(注文数)を参考に、事業化フェーズに移行するかどうかを今年度中に判断。定常サービスへの移行は次年度を予定している。
世界中で、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素化」の流れが加速し、電気自動車需要の拡大が続いている。全国1万3000カ所のネットワークを活用し、「脱石油」に向け新たな事業を展開できるか。石油元売り大手ENEOSの今後の動きに注目だ。
著者プロフィール
太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)
1988年生まれ。日本大学芸術学部放送学科で脚本を学んだ後、住宅業界の新聞社に入社。全国の工務店や木材・林業分野を担当し取材・記事執筆を行った。
その後、金属業界の新聞社に転職し、銅スクラップや廃プラリサイクルなどを担当。
2020年5月にフリーランスのライター・記者として独立。現在は、さまざまな媒体で取材・記事執筆を行っている。Twitter:@oota0329
ポートフォリオはこちら
関連記事
- 実は3種類ある「プリンスホテル」 売り上げ1位なのに、実態がよく知られていないワケ
規模や知名度などから、日本においてホテルの代名詞的な存在とされてきた「プリンスホテル」。2007年からは“新生プリンスホテル”として、ブランド戦略を進めている。 - お仕事と“推しごと”を両立! SNSで話題の「推しごとバッグ」はなぜ生まれたのか
エレコムが、お仕事と“推しごと”を両立できる「推しごとバッグ」を発売した。SNS上で話題となっている商品はなぜ生まれたのか。担当者に聞いてみた。 - ビジネスホテルの“無料朝食”、気になる原価は一体いくら? 激化する“朝食合戦”から見るホテルの今
ホテルが朝食で特色を出そうとしていることは、宿泊者としてひしひしと感じる時がある。新たな施設の建設やリノベーションを施せば特色は強く打ち出せるが、コストはバカにならない。朝食は差別化のアイテムとして取り組みやすい部分なのだろう。 - JR東、山手線で自動運転導入に向けた試験 営業時間帯に実施へ
JR東日本が、山手線の自動運転導入に向けた試験を営業時間帯に実施する。 - SUV専用タイヤが靴底に 洋服の青山とブリヂストンが作った革靴は何が違うのか
青山商事が、ソールにSUV用タイヤのトレッドパターンを採用した革靴を発売している。 - ファミマが掲げる“無人1000店” 小型・無人化で開拓する新たな商圏とは?
コロナ禍の影響もあって注目を集めている無人決済店舗。その導入で1歩リードしているコンビニが、ファミリーマートだ。なぜファミマは導入を加速させているのか。担当者に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.