北京五輪選手村で実証実験中の「デジタル人民元」 中国の狙いとは?:元日銀局長が解説(1/4 ページ)
中国政府が国内で実証実験を進めている「デジタル人民元」。中央銀行が発行するデジタル通貨で、北京五輪の選手村でも実験中だ。デジタル人民元を推進する中国の3つの狙いとは?元日銀局長に聞いた。
短期連載「沸騰!北京五輪」
コロナ禍での開催となった北京五輪。北京は2008年にも夏季五輪を開催しており、夏冬の五輪を開催した史上初の都市となる。前回の北京五輪から約14年が経過し、ビジネス環境も大きく変化している。冬のビッグイベントに出場選手や企業、政府などはどう関わっているのか。動向を追う。
中国政府が、北京五輪選手村で「デジタル人民元」(e-CNY)の実証実験を行っている。デジタル人民元は、中国の中央銀行「中国人民銀行」が発行する中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency、CBDC)。中国は主要国初の正式発行を目指しており、五輪を機にデジタル人民元を国際的にアピールする狙いがある。元日本銀行局長で、現在は「デジタル通貨フォーラム」座長などを務める山岡浩巳さんに、前編ではデジタル人民元発行の狙いや今後の展望を、後編では日本の課題などを解説してもらった。
主要都市で実証実験中の「デジタル人民元」
本題に入る前に、デジタル人民元を巡る一連の流れなどの基本情報をおさらいしておこう。中国は2014年、中国人民銀行(PBOC)にデジタル通貨に関する研究チームを発足させ、17年には「デジタル通貨研究所」を設立。デジタル通貨技術の研究を本格化させた。19年にはCBDCの発行計画を正式表明した。
その後、20年10月から深セン市で、抽選に当選した5万人の市民を対象にした実証実験を開始。携帯電話のSMSで当選通知を受けた市民は、専用のウォレットをダウンロードし、200元分(約3200円)のデジタル人民元を受け取った。
その後、同市での対象店舗数を拡大するとともに、上海市、北京市、蘇州市なども対象とし、実験規模を拡大している。買い物時の決済手段としてだけでなく、公務員の給与支給に活用する取り組みも一部で実施しているほか、22年1月には、専用アプリのリリースを始めた。
北京五輪の選手村では、国際オリンピック委員会(IOC)のスポンサーである米ビザのクレジットカードと現金以外の決済手段として、デジタル人民元の決済端末を設置。報道関係者や選手などの大会関係者向けに利用促進を図っている。ロイター通信の報道によると、デジタル人民元の使用額が1日当たり200万元(約3600万円)以上に達しているという。
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