決算書から粉飾は見抜けるのか? 上場廃止グレイステクノロジーの「不可解な動き」:矢部謙介「決算書を読み解く」(1/3 ページ)
粉飾決算が発覚し、上場廃止が決まったグレイステクノロジー。元会長などが粉飾決算を主導していたことが明らかになっているが、開示された決算書データから兆候を見抜くことは可能だったのか。
粉飾決算の発覚が元で、2月28日に上場廃止が決まったグレイステクノロジー。同社は、メーカーなどを顧客としたマニュアルの企画・制作事業や、マニュアルをデジタル化して制作の工数削減を実現するシステムの導入・運営事業を主な事業とし、2016年12月には東証マザーズに、18年8月には東証一部への上場を果たした。
一時は成長企業として将来を有望視されていたグレイステクノロジーだが、21年11月に外部機関から過年度決算において不適切な会計処理が行われた疑いがあるとの指摘を受けたと発表。その後22年3月期第2四半期報告書を提出できず、上場廃止が決まった。
グレイステクノロジーが1月27日に公表した粉飾決算に関する特別調査委員会の調査報告書によれば、21年4月に死去した元会長などが粉飾決算を主導していたことが明らかになっているが、決算書にはこうした粉飾の兆候はあったのだろうか。今回は開示された決算書のデータから、粉飾の兆候を見抜けるかどうかを解説する。
グレイステクノロジーの業績
まずは、グレイステクノロジーの損益計算書(P/L)から、業績の推移を見ていこう。なお、グレイステクノロジーでは21年3月期のみ連結決算を開示しているが、今回は断りのない限り、全て単独決算の数値を使用している。
図表1によれば、上場直前の決算期である15年3月期においては、売上高が約6億2000万円、営業利益が約1億300万円、売上高営業利益率(=営業利益÷売上高)が約17%だったのに対し、21年3月期では売上高が約18億1200万円、営業利益が約10億300万円、売上高営業利益率が約55%となっている。
ここからは、売上高、営業利益がともに大きく成長し、利益率も大きく向上している様子が伺える。P/L上のデータから読み取れるグレイステクノロジーの業績は順調そのもので、成長性の高い優良企業のように見える。
もっとも、粉飾を行う企業の目的は自社の業績を良く見せることであるから、P/Lにおける見かけ上の成長性や収益性が高いことはある意味当然といえる。そのため、P/L以外の決算書から粉飾の兆候を探らなければならない。
粉飾の兆候はCFから読み取れるか?
粉飾決算を見抜く上で有力な情報源となるのが、キャッシュ・フロー計算書(CF計算書)である。
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