岸田政権の「新しい資本主義」、最大の被害者が「一般国民」になるこれだけの理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
岸田ショック(Kishida Shock)という言葉が世界中で広がりを見せつつある。2021年には、世界的メディアが相次いで「Kishida Shock」を見出しとしたニュースを配信した。そのような「株主イジメ」による弊害は、回り回って一般庶民に返ってくる可能性が高く、決して他人事ではない。
新しい資本主義で被害にあうのは一般国民?
そもそも、運用をやめても一生暮らしていける蓄えがある富裕層にとっては、株式にネガティブな政策変更があったとしても痛くも痒くもない。なぜなら、株式が厳しくなればそのポジションを精算して、商業ビルやアパートといった「不動産所得」や「利子所得」といった「非金融所得」に逃げれば良いだけだからだ。それでも富裕層が金融所得にこだわるのであれば、日本を出ればいいだけだ。
一方で、そんな資金もない一般庶民にとって、預金以外で老後資金を貯めるのなら、低金利の今は「金融所得」しかないのである。このように、金融所得の増税をはじめとした株主いじめの数々は、富裕層いじめとしての効果がないだけでなく、むしろ「一般庶民いじめ」になってしまう可能性が高い。
それでも「自分は株を持ってないから関係ない」とする人もいるだろう。しかしほとんどの場合、自身が直接株を持っていなくても間接的に株を保有していることは、案外知られていないかもしれない。
生命保険や損害保険、銀行預金といった誰しもが利用し得る金融商品は、保険契約者や預金者から預かった資金を運用することでも収益をあげている。マイナス金利政策が長期化していることで債券運用の利ザヤが縮小し、これらの業種にダメージが蓄積している。ただでさえ債券で収益を上げることが難しい今、株式にとってネガティブな政策変更を連発すれば、上記のような金融セクターにとってさらに利ザヤを獲得しにくくなるだろう。それが、「振込手数料の値上げ」や「ATM手数料無料条件の縮小」といった各種の改悪という形で国民生活に転嫁されていく可能性もある。
それだけではない。岸田ショックによって本質よりもさらに日本企業の時価総額がディスカウントされれば、外資に日本の会社が買収されやすくなるし、資金調達の際に外部株式に放出しなければならない議決権割合が増加する。仮にあなたが株式を持っていなかったとしても、関係先に上場企業があれば、そこから悪影響が波及してこない保証はどこにもない。
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