コロナ禍で成功パターンが消えた──逆境のベルフェイスを「受注率10倍」に導いた秘策:先駆者たちの「セールスイネーブルメント」(2/3 ページ)
オンライン営業システムを提供するベルフェイスにとって、コロナ禍は逆境だった。多くの人がWeb会議システムで商談をすることに慣れ、競合は増え、電話商談の機会は減ったからだ。そんな中、セールスイネーブルメントに取り組んだことで、受注率は約10倍になったという。一体どんな取り組みを行っているのだろうか。
まずは「仕組み化」に注力 鍵は“購買可能性”
──最初に実施したことを教えてください。
前提として営業組織が取り組むべきことに「仕組み化」と「カルチャー醸成」、2つの項目があると考えています。そこで最初に取り組んだのは「仕組み化」。21年の2月頃から着手しました。
仕組み化するためには具体的に2つ、(1)購買可能性の高い顧客の絞り込みをすること、(2)購買可能性を上げる営業プロセスの型化をする必要があります。
そこでまずは(1)に対して、縦軸「受注可能性」と横軸「売上高ポテンシャル」の2軸で整理しました。
受注可能性とはお客さまとbellFaceとのフィット度を表し、売上高ポテンシャルとはbellFaceを利用していただける可能性のあるユーザー数(=従業員数)を表しています。売上高ポテンシャルとは、お客さまが成功し、その後の契約を継続する可能性の高さを指しています。
2つの軸が交わる濃いピンクのゾーンがあります。そこに営業のスキルとリソースを投下するのです。ベルフェイスではその戦略を「DPZF戦略」(Deep Pink Zone Focus戦略)と呼んでいます。
その後、過去の受注からお客さまの傾向を探り、購買可能性の高いお客さまが持つ要素を言語化しました。「受注4因子」と呼び、具体的に以下4つに定めました。
受注4因子
(1)商談のゲストの方がITに不慣れなこと
(2)商材がパッケージ型であること
(3)1対1で商談を行う頻度が多いこと
(4)新規顧客獲得が中心であること
まずは2万5000件の対象企業を抽出し、その後は手作業で1件1件の企業のWebサイトなどを確認して、購買可能性が一番高く、売上高ポテンシャルも大きいお客さまをバイネームで絞り込みました。それらを基にインサイドセールスと連携することで、購買可能性の高いお客さまだけと商談する運用ができています。
「情報収集」と「仮説構築」のフォーマット化を実行
──ターゲティングした後は、どのように実行していったのでしょうか?
お客さまの課題を解決するには、いかに正しい事実情報を集め、それを基に仮説を立てて提案できるかが肝になります。
つまり「情報収集」と「仮説構築」の均質化が必要です。私たちはそれら2つにおいて、それぞれ手を打っていきました。
まずは「情報収集」をするためにフォーマットを作成しました。これまではお客さまの情報をWebから集めたり、お客さまにヒアリングしたものを属人的にメモしていたりしたのですが、ヒアリング後はフォーマットに沿って情報を記載してもらうようにしました。
フォーマットは「ハピカル」(ハッピーカスタマーカルテ)と呼んでいます。お客さまをハッピーにさせようという意味から名付けました。
──「ハピカル」はどのように運用しているのでしょうか?
初回商談をした後は、検討フェーズに移行したお客さま全員に対して作成するようにしています。
また2週間に1回、オフラインでミーティングする時間を設定しており、その際に進行具合をチェックし、ディスカッションする場を設けています。その際、万が一記載が抜けていれば、注意して運用を徹底しています。
──「仮説構築」に対してはどのような取り組みを実行したのでしょうか?
お客さまが実現したいことに対してボトルネックを設定するため、仮説を構築する簡易なフォーマットを作成しました。「点火する」という意味をもつ英単語「ignite」を用い、「Ignite map」(イグナイトマップ)と呼んでいます。
あまり資料作成工数に時間をかけないよう各メンバーに記載を依頼していて、記載してもらったものを基に案件に対するフィードバックの場「Ignite meeting」(イグナイトミーティング)で、私と他メンバーを交え、ディスカッションしています。
──名前に工夫が施されているところに、ベルフェイスのカルチャーが垣間みえますね。
名前が硬いとなんだかつまらないじゃないですか。ちょっとでも面白い名前をと思い、それぞれ名付けていますね。
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