日本から百貨店がなくなる日――そごう・西武の売却から考える“オワコン業界”の今後:ヒントは海外・他業界にあり?(1/3 ページ)
そごう・西武の売却は、「日本から百貨店がなくなる日」の予兆かもしれないと筆者は解説する。もはや“オワコン”ともいえる百貨店業界は、これから先どうすればよいのか。他業界や海外事例にヒントがありそうだ。
昭和の高度成長期に幼少時代を過ごしたわれわれの世代には、デパートは欲しいものにあふれた、まさに夢の国的な憧れの場所でした。銀座で仕事をしていた父に連れられて松坂屋や三越や松屋で買い物をすることは、この上ない特上の体験として今も深く記憶に刻まれています。そんなデパートが、いや百貨店業界が崩れていく――。昨今の業界を巡るニュースを、複雑な思いで受け止めています。
セブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)が、傘下の百貨店「そごう・西武」の売却を決め既に入札が始まっているようです。オワコンといわれて久しい百貨店業界ですが、流通の雄であるセブン&アイがその再生・活用にさじを投げたともいえる今回の件は、今後の業界動向を大きく揺るがすきっかけになるのかもしれません。
百貨店業界は大きく2つに分類されます。
一つは江戸時代にその起源を持つ歴史のある名門呉服屋系。高島屋、三越、伊勢丹、大丸、松坂屋などがこれに当たり、彼らは一等地に店を構え、かつ古くからお得意様という名の多くの富裕層顧客に支えられてきました。
もう一つは後発の主に電鉄系百貨店で、戦後電鉄会社の沿線住宅開発に伴って始発駅を始め主要自社ターミナル駅に店を作り、スタートは鉄道利用の促進を狙ったものでした。言い換えれば、富裕層の地盤を持たない(東急の田園調布や阪急の芦屋のような、自社が作った沿線の富裕層住宅地域の住民を除き)大衆向け量販型百貨店というくくりになるでしょう。
そごう・西武 「大衆向け量販型百貨店」の歴史
旧そごうは電鉄系ではなく呉服屋系ではありますが、関西の中小呉服店がその起源であり、富裕層取引に弱く昭和における戦略は電鉄系と同じ大衆向け量販型にならざるを得ませんでした。しかも高度成長期においても店舗数は全国で3店舗と出遅れ感は半端なく、一等地は既に老舗百貨店に占有されていました。
そのそごうを一気に大手百貨店に押し上げたのが、日本興業銀行から転じた故・水島廣雄社長です。水島氏は都内一等地出店を諦め、レインボー作戦と銘打ってその周辺地域である横浜、千葉、大宮、八王子など、都心部を囲む戦略で出店攻勢をかけ、バブル期には全30店舗にまで拡大し、横浜店は売り上げが世界一を誇るに至りました。
旧西武百貨店は生粋の電鉄系であり、かつ沿線に富裕層向けの高級住宅地も持たないがゆえに、典型的な大衆向け量販型百貨店であったといえます。それを大きく発展させたのは、西武鉄道創業者である堤康次郎氏の次男の故・堤清二氏です。文筆家でもあった氏の「感性経営」で、渋谷西武やグループのパルコ、ロフトを若者文化のリード役的ブランドに成長させ、若い世代を中心とした大衆を大きく呼び込んで事業の拡大を図りました。時まさにバブル期。出自が同じような立場にあったそごうと西武は、バブル期に同じようにカリスマ経営者に導かれて大衆を大きく取り込んで一時的な大発展を遂げたのです。
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